2018年03月05日

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安倍首相は経済団体首脳に対して、今年も賃金の3%アップを要請したと言う。業績好調な企業が賃上げを行うことは、ステークホルダーである従業員への還元という意味からも望ましい。ところが、実現したとされる賃金上昇は、統計上の数値はともかく、生活者の実感にそぐわないものであることは否定できない。

賃金が上昇しているとされる一方で、所得の増加が実感されない要因の一つに、就労構造の変化があることは間違いない。非正規労働者の増加が、全体の賃金上昇を間接的に抑えている。非正規雇用者が将来直面する年金問題を考えると、何らかの“自動的な”制度による資産形成へと誘導しておくべきではなかろうか。

また、賃金が上昇しても、可処分所得の増加を実感できないために、消費が拡大しないこともある。給与から天引きされる中で、健康保険・介護保険・厚生年金といずれの保険料も、賃金の増加以上に料率引上げから増額されている場合が多いと思われる。

更には、高額所得者とされる層に対する配偶者控除の撤廃や給与控除の圧縮と、次々に可処分所得を圧迫する税制改正が行われている。これでは相対的に消費性向が高いと考えられる人々の可処分所得が増えず、消費が増勢とならないのは当たり前であろう。
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(2018年03月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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【なぜ賃金上昇の実感が乏しいか】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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