2018年02月09日

景気ウォッチャー調査(18年1月)~降雪や寒波により来客数が伸び悩み、6ヵ月ぶりに節目の50割れ~

白波瀨 康雄

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3.景気の先行き判断DI(季節調整値):3ヵ月連続の悪化も、50を上回る水準は維持

先行き判断DI(季節調整値)は52.4(前月差▲0.3ポイント)と3ヵ月連続で悪化した。DIの内訳をみると、企業動向関連(前月差+0.6ポイント)は改善したものの、家計動向関連(前月差▲0.2ポイント)、雇用関連(同▲3.0ポイント)が悪化した。
景気の先行き判断DI(季節調整値)/景気の先行き判断DI(分野別、季節調整値)
家計動向関連では、「今年は雪が多いことから、来客数が減少しているものの、客単価が上昇していることから、今後、雪解けが進むとともに来客数が回復することになり、売上も増加することが期待できる」(北海道・コンビニ)や「雪解けと同時に本格的な需要期を迎えるため、期待している」(東北・乗用車販売店)など、春先に向けて来客数が回復することを期待するコメントがみられた。また、「気温の上昇とともに客が外出する機会が増え、消費税率引上げの話題も活発になってマイホーム建築に動き出す」(中国・住宅販売会社)など、住宅関連では消費税率引き上げ前の駆け込み需要にも期待している。一方、「野菜単価と原油価格の上昇による加工食品の値上げの影響で消費者の節約が続く」(中国・スーパー)など、エネルギー代や生鮮食品の価格上昇による消費の落ち込みが懸念されている。

企業動向関連では、「3月の受注量はこの2年間で最も多く、生産が間に合うかどうか心配なほどである」(東海・輸送用機械器具製造業)や「現状で受注量は高位安定しており、この状態がしばらく続く」(中国・鉄鋼業)など、今後も好調な受注が続くとする企業が目立った。「近年は大型物件が多く工期が長くなる傾向にあるので、受注時点よりも発注段階で資機材の価格が上昇することによって利益を圧迫する」(中国・建設業)や「年度末、新年度に期待したいが、景気が上向くような話はない。人手不足や燃料費の高騰など、収益の悪化が心配で、厳しい状況はまだ続く」(南関東・輸送業)など、輸送業を中心に、コストの増加により収益が圧迫することを懸念するコメントがみられた。

雇用関連では、「求人はあるが、慢性的な人材不足が続いている。人材確保のため時給を上げる企業も増えている。また、新年度に向けた増員の話も出てきている」(南関東・人材派遣会社)など、待遇の改善や新年度に向けて採用を増やす企業がみられる。また、「雇用の無期転換問題への対応を目前にして、企業側の混乱が見込まれる。また、不合理な解雇や、逆に求職者側からの離脱、転職も見込まれることから、企業活動に悪い影響を与える可能性を懸念している」(東北・人材派遣会社)や「労働者派遣法の3年の期間制限が近づくにつれ、直接雇用化は増加する見込みである」(南関東・人材派遣会社)など、2018年4月から始まるいわゆる無期雇用転換ルールに関するコメントがみられた。
現状判断DIと日経平均株価の推移 高水準で推移していた景況感は大幅に悪化したが、降雪や寒波により客数が伸び悩んだという特殊要因による影響が大きい。先行きは3ヵ月連続で悪化したものの、低下幅は0.3ポイントと現状の4.0ポイントと比べて小幅に留まっており、50を上回る高水準にある。物価上昇に伴う消費の落ち込みやコスト上昇による収益悪化などの懸念が高まっているが、特殊要因が剥落すれば現状の景況感も改善に向かおう。

ただし、2月に入ってから米金利上昇に伴う米国株の急落をきっかけに世界的にリスクオフの動きが広がっており、日経平均株価も大幅安となった。為替相場では過度な円高は進んでおらず、実体経済に与える影響は限定的となりそうたが、調整が長引き、資産効果等により好調だった高額消費の売上に陰りが出てくれば、百貨店等を中心に景況感の押し下げ要因になってくる可能性がある。
 
 

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白波瀨 康雄

研究・専門分野

(2018年02月09日「経済・金融フラッシュ」)

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