2018年02月08日

東京都心部Aクラスビルのオフィス市況見通し(2018年)-2018年~2024年のオフィス賃料・空室率

金融研究部 主任研究員 佐久間 誠

文字サイズ

4. 今後のAクラスビル新規供給、都区部オフィスワーカー数の見通しと経済見通し

三幸エステートの調査によると、Aクラスビルの新規供給は、2018年と2020年に20万坪を超え、2012年を上回る大量供給となる予定である。東京五輪後は一旦供給も落ち着くが、2023年と2024年には再び大量供給が予定され、2018年から2024年の7年間において、平均15万坪超/年の新規供給が見込まれている(図表-8)。

東京都によると、東京都区部および都心5区のオフィスワーカー数は2015年をピークに、減少していくと予測されている。ただし、東京都や東京圏への人口の転入超過が高水準で続いていることもあり、当面はオフィスワーカー数の急激な減少はないと考えられる7(図表-9)。

ニッセイ基礎研究所では、日本経済は人口減少局面に入っているが、そのペースは想定されていたよりも緩やかで、今後10年間の実質GDP成長率は平均1.0%と予想している8(図表-10)。
図表-8 東京都心部Aクラスビル新規供給見通し/図表-9 東京都区部・都心5区のオフィスワーカー数見通し
図表-10 実質GDP成長率見通し
 
7 2017年の東京都の転入超過数は75,498人で、前年の74,177人を上回った。また東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)への転入超過数は4年連続で10万人超である。景気回復により雇用環境が改善し、東京への人口流入が一段と進んでいる。
8 経済見通しは、ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2017~2027年度)」(2017.10.13)、斎藤太郎「2017~2019年度経済見通し-17年7-9月期GDP2次速報後改定」(2017.12.8)などを基に設定。
 

5. 東京都心部Aクラスビル市況見通し

5. 東京都心部Aクラスビル市況見通し

2018年から2024年までの東京都心部Aクラスビルの空室率と成約賃料を、今後の経済見通しや新規供給計画、オフィスワーカー数の見通しなどを基に予測した(図表-10、図表-11)。

東京都心部Aクラスビルの賃料は、2018年4Qから下落し、2021年3Qを底に反発する見通しである。標準シナリオでは、2021年3Qまでに2017年4Q対比▲18.5%の下落となるが、その後は上昇し、2023年4Qには同▲6.1%まで回復する。また、楽観シナリオでは、2018年3Qに2017年4Q対比+6.2%の上昇となった後に、2021年3Qには同▲8.1%まで下落し、2023年Q4期に同+4.0%へ上昇する。悲観シナリオでは、2021年Q3期に同▲29.6%減まで下落した後に、2023年Q4期には同▲17.0%に回復することが見込まれる。

Aクラスビルの空室率は、2018年後半と、2020年前半に上昇(市況悪化)した後、2020年4Qをピークに低下(改善)に転じる。その後、2023年から空室率の上昇が再開するが、2012年の水準までは上昇しない見通しである。
図表-11 東京都心部Aクラスビルオフィス賃料(オフィスレント・インデックス)見通し

6. おわりに

6. おわりに

東京のAクラスビルへの需要は底堅く推移しており、現在は2018年以降の大量供給への懸念が後退しつつある。当社が2018年1月に実施した不動産市況アンケート9によると、「今後、価格上昇や市場拡大が期待できる投資セクター」という設問に対して、オフィスビルと回答した割合が前年の19.7%から29.2%へ増加するなど、オフィスビルへの投資意欲も回復してきている(図表-12)。

しかし、本稿の推計では、2018年後半から賃料は下落を開始するという結果となった。2018年に竣工するビルの内定は順調に進んでいるものの、今年後半からは二次空室や三次空室が顕在化する可能性が高い。ただし、オフィス需要が急減したリーマンショック後のような大幅な賃料下落とはならず、緩やかな下落にとどまる見込みだ。2021 年には賃料は上昇基調に転じるが、2023年と2024年の大量供給が見込まれるため、成長サイクルの半ばで需給バランスが悪化し、賃料上昇も頭打ちとなることが予測される。
図表-12 今後、価格上昇や市場拡大が期待できる投資セクター
 
 

(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
Xでシェアする Facebookでシェアする

金融研究部   主任研究員

佐久間 誠 (さくま まこと)

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

経歴
  • 【職歴】  2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行)  2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX)  2015年9月 ニッセイ基礎研究所  2019年1月 ラサール不動産投資顧問  2020年5月 ニッセイ基礎研究所  2022年7月より現職 【加入団体等】  ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター  ・日本証券アナリスト協会検定会員

(2018年02月08日「不動産投資レポート」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【東京都心部Aクラスビルのオフィス市況見通し(2018年)-2018年~2024年のオフィス賃料・空室率】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

東京都心部Aクラスビルのオフィス市況見通し(2018年)-2018年~2024年のオフィス賃料・空室率のレポート Topへ