2018年02月01日

【1月米FOMC】予想通り、政策金利を据え置き。声明文は3月追加利上げを示唆

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.金融政策の概要:政策金利を据え置き、物価見通しに関する表現を上方修正

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が1月30-31日(現地時間)に開催された。FRBは、市場の予想通り、政策金利を据え置いた。

今回発表された声明文では、景気の現状や見通し部分で、前回まであったハリケーンに関する表現が削除されたほか、物価に関する表現が上方修正された。また、ガイダンス部分についても「漸進的な政策金利の引き上げ」の前に「更なる」との表現が追加され、政策金利の引き上げが継続することをより明確に示す表現に変更された。

今回の金融政策は全会一致で決定された。なお、今回の会合からリッチモンド連銀のバーキン総裁、アトランタ連銀のボスティック総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁、サンフランシスコ連銀のウイリアムズ総裁が投票メンバーに加わった。一方、イエレンFRB議長は今回が最後のFOMC会合となり、次回(3月会合)からはパウエル新議長がFOMC会合をリードする。

2.金融政策の評価:3月の政策金利引き上げは確実、18年も政策金利の引き上げは継続

政策金利の据え置きは予想通り。今回発表された声明文では、足元で物価指標が底打ちしていることもあって、物価に関する表現が上方修正された。今後の物価動向は、引き続き原油相場などから大きく影響を受けるものの、FRBは好調な経済状況や労働需給の逼迫によっても低位に留まっていた17年の物価状況が持続する蓋然性は低下したと判断しているとみられる。とくに、18年は法人減税を柱とする税制改革の効果で成長加速が見込まれることから、物価上昇ペースの加速に自信を深めているだろう。

また、ガイダンス部分で政策金利の引き上げが長期化することを示唆する表現変更もあったことから、これまで年3回としてきたFOMC参加者の18年政策金利見通しが次回会合で年4回に上方修正される可能性が高まったと考えられる。

当研究所は、これまで政策金利の追加利上げ時期を6月とし、18年の政策金利引き上げ回数を3回としてきたが、今回の声明文を受けて次回引き上げを3月に変更し、原油価格が大幅に下落しない前提で政策金利の引き上げ回数を年4回に変更する。

次回会合後の記者会見でパウエル新議長がどのような金融政策方針を示すのか注目される。

3.声明の概要

(フォワードガイダンス、今後の金融政策見通し)
  • 既に実現した労働市場環境や物価、およびこれらの今後の見通しを考慮して、委員会はFF金利の目標レンジを1.25-1.50%に維持した(政策金利の維持を反映)
  • 金融政策スタンスは依然として緩和的であるため、強い労働市場の状況や、物価の2%への持続的な上昇を下支えする(変更なし )
  • FF金利の目標レンジに対する将来の調整時期や水準の決定に際して、委員会は経済の現状と見通しを雇用の最大化と2%物価目標に照らして判断する(変更なし)
  • これらの判断に際しては、雇用情勢、インフレ圧力、期待インフレ、金融、海外情勢など幅広い情報を勘案する(変更なし)
  • 委員会は、対称的な物価目標に関連させて、物価の実績と将来見通しを注意深くモニターする(変更なし)
  • 委員会は、FF金利の更なる漸進的な引き上げを正当化するような経済状況の進展を予想しており、暫くの間、中長期的に有効となる水準を下回るとみられる(緩やかな引き上げの前に「更なる」“further”を追加)
  • しかしながら、実際のFF金利の経路は、今後入手可能なデータに基づく経済見通しによる(変更なし)
     
 
(景気判断)
  • 労働市場は引き続き力強さを増し、経済活動は堅調に増加した(変更なし)
  • ハリケーンに伴う変動を均せば雇用の伸びは堅調で、失業率はさらに低下した(今回削除)
  • 家計消費は緩やかに増加したほか、設備投資の伸びはここ数四半期に加速した(今回削除)
  • 雇用増加、家計消費、民間設備投資は堅調で、失業率は低位に留まっている(ハリケーンに関する文言を削除し、労働市場、家計消費、民間設備投資に関する表記を一文に集約)
  • 前年比でみた総合および食料品とエネルギーを除いたインフレ指標は、2%を下回って推移している(「今年低下し2%を下回っている」”declined this year and are running”を削除し、「下回って推移している」”continued to run”に表現変更)
  • 市場が織り込むインフレ率は、ここ数ヵ月上昇したが、依然として低位に留まっている(「ここ数ヵ月上昇したが」”have increased in recent months but”を追加)
  • 調査に基づく長期物価見通しは、全般的には変化に乏しい(変更なし)


(景気見通し)
  • ハリケーンに伴う破壊と再建は、ここ数ヵ月間の経済活動、雇用やインフレに影響を及ぼした(今回削除)
  • しかしながら、米経済の見通しを著しく変えることはなかった(今回削除)
  • 委員会は、金融政策スタンスの更なる漸進的な調整により、経済活動は緩やかに拡大し、労働市場は強い状況が続くと予測している(漸進的な調整の前に「更なる」”further”を追加)
  • 前年比でみたインフレ率は今年上昇し、中期的に委員会の目標とする2%近辺で安定すると予想する(前回にあった「短期的には幾分2%を下回るものの」”remain somewhat below 2 percent in the near term but”を削除し、「今年上昇し」”move up this year and”を追加)
  • 経済見通しに対する短期的なリスクは概ねバランスしている(変更なし)
  • 委員会は、引き続きインフレ動向と世界経済および金融情勢を注視する(変更なし)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2018年02月01日「経済・金融フラッシュ」)

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