2018年01月31日

健康に関わる女性の不安-年齢とともに感染や罹患から介護へ、未婚40代は不安最多だが半数は対策をしておらず

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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4――健康や医療、介護に関わる対策~特にない多数、不安最多40代未婚女性の半数は対策しておらず

図表4 健康や医療、介護に対する心がけ(複数選択) 最後に、健康や医療、介護に関わる不安に対して、どのような対策をしているのかを見る。

日常生活における健康や医療、介護に対する心がけについて尋ねたところ、全体では「かかりつけ医など、信頼のできる相談相手を身近にみつける」(32.4%)が最も多く、次いで「医療・介護に対しして経済的に備える」(17.8%)、「家、職場等の近くの医療機関を把握する」(16.8%)が続く。一方で「特にない」(45.0%)も多い。 

性別に見ても男女とも全体と順序は同様である。なお、「特にない」を除く全ての項目で男性より女性の方が多い

年代別には、50~60歳代は全体と同様の順序だが、20~40歳代は2位に「家、職場等の近くの医療機関を把握する」があがる。なお、「家、職場等の近くの医療機関を把握する」と「特にない」を除く各項目は高年齢ほど多く、「特にない」は若いほど多い傾向がある。また、図表は省略するが、未既婚別には、「特にない」を除く全ての項目で、未婚者より既婚者の方が多い。

つまり、図表2で見た不安の多い女性や高年齢層では、健康や医療、介護に対して日ごろから何らかの備えをしている者が多い傾向がある。

ところで、40歳代の未婚女性は最も不安の多い層だったが、同年代の女性と比べて「特にない」(46.3%)が多い。図表3に示したように、健康問題を抱える者が徐々に増える一方で約半数の女性は何の備えもしていないことが不安の背景にあるのかもしれない

なお、40歳代の未婚女性が行っている対策では「どこへいけば必要な医療・介護サービスを受けられるかを把握する」や「必要なときに利用できる入院施設、介護保険施設を把握する」が同年代の女性より多いが、その他は既婚者と比べて少ない傾向がある。一方、既婚者では、子のいない女性は「医療・介護に対して経済的に備える」や「公的な健康(医療)保険・介護保険制度の内容を把握する」、「必要なときに受けられるように、先進医療などの高度な医療についての知識を吸収する」が多く、子のいる女性は「かかりつけ医など、信頼のできる相談相手を身近にみつける」や「家、職場等の近くの医療機関を把握する」、「家の近くで夜間・休日に救急診療を受けられる医療機関を把握する」が多い。つまり、40歳代の未婚女性は有事の時の施設やサービスの把握、子のいない女性は経済的な備えや制度等の理解、子のいる女性は有事というよりも日常的に利用するための医療機関の把握が多い傾向がある。これらの違いは、自分の面倒を見てくれる、あるいは、自分が面倒を見る家族の存在の有無によるものなのだろう。

ところで、男性は女性と比べて不安も少ない一方、健康や医療、介護に対する心がけも少ない。前述の通り、男性は女性ほど若い頃から健康意識が高くない影響もあるだろうが、健康などへの心がけについて同年代の既婚男女を比べると、「特にない」を除けば、おおむね男性の方が女性より少ないことから、妻にまかせて自分では特に対策をしていない男性も多い様子がうかがえる。
 

5――まとめ

5――まとめ~多様化するライフコースに合った商品・サービス、政策で活気ある社会に、40歳代未婚女性は対策をすることで不安軽減の可能性も

本稿では調査データを用いて、健康や医療、介護に関わる不安要因を分析した。その結果、健康や医療、介護に関わる不安は「受傷・罹患不安」「要介護関連不安」「医療過誤・感染不安」「介護・医療サービス受給不安」「インフォームド・コンセント不安」の5つに要約ができることが分かった。また、女性に注目して年齢や未既婚、子の有無、働き方による違いを見たところ、ライフコースによらず、年齢とともに医療過誤・感染の被害や受傷・罹患に対する不安から介護に対する不安へとうつる様子が見えた。

不安が最も多いのは40歳代の未婚女性であり、背景には、自身の有事に面倒を見てくれる人がいない可能性に加え、女性特有のがん罹患率が上昇する年代であること、そして、これらの状況であるにも関わらず、約半数しか対策をしていないことも影響しているようだ。一方で男性は、女性と比べて不安が少ないが、対策をしている者も少ない。女性と比べれば健康意識が低いことに加え、既婚者では対策は妻にまかせており関心が薄いためだろう。

対策をしている者の少なさを見ると、40歳代の未婚女性の不安は、適切な対策をすることで軽減できる可能性がある。特に、既婚者と比べて日常的に利用するための医療機関(かかりつけ医や自宅・職場近くの医療機関、夜間・休日診療など)を把握している割合が少ない傾向があるため、要介護時など重篤な事態へ備えるだけでなく、日常時の不調に対する備えを充実させることも、不安を減らすことにつながるかもしれない。

平均寿命が延び、健康や医療、介護に関わる不安を抱える時期は長期化している。また、皆が同じような年齢で結婚し、子を持ち、同様のライフコースをたどっていた時代とは違い、現在ではライフコースは多様化し、不安の持ち方も多様化している。本稿で見たような性別や年齢、未既婚、子の有無、働き方などの属性に加えて、経済状況や居住地などでも違いがあるだろう。生活者の不安やニーズを丁寧に捉えた商品・サービスが提供されること、そして、政策が実行されることが、高齢化がますます進行する中でも活気ある社会につながるのではないだろうか。
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

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