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- 【ロシア経済】2018年の見通し~2018年の成長率は2017年からほぼ横ばい~
(民間消費) 低インフレによって、消費マインドが改善し、堅調に推移。
2017年の民間消費はインフレ率の低下に伴う消費マインドの改善によって堅調に推移した。2017年は原油価格の持ち直しと、過去最多となった穀物生産によって食料品価格が下落したこともあいまって、インフレ率が低下し、消費マインドが改善した。労働市場では、2017年に入ると失業率が緩やかに低下し、実質賃金も前年比で上昇傾向が続いている(図表7)。実質可処分所得こそ前年比で減少が続いているが、消費マインドの改善によって小売売上高や新車販売台数は前年比で増加が続いており(図表8)、民間消費の回復が顕著になった。
2017年の政府消費は前年同期比で増加するも、2017年度(1月-12月)の連邦政府は前年度より緊縮的な財政政策を採用したため、微増にとどまったと見られる。先述の通り、石油・天然ガス関連の収入は連邦政府の歳入に占める割合が高いため、原油価格が大きく下落した2014度年から15年度にかけて連邦政府の歳入は減少した(図表9)。また、社会保障費の高い伸びなどの歳出の拡大もあって、財政赤字は拡大し、財政赤字を補填する予備基金5の残高は大きく減少した。原油価格の持ち直しによって2017年度は歳入が大きく増加したものの、政府は予備基金の枯渇を防ぐべく、緊縮的な財政政策を志向したため、歳出は前年度からほぼ横ばいとなった。その結果、2017年度の財政赤字は前年度から縮小した。
5 原油価格下落時の財政赤字への備えとして、2008年に設立されたロシア連邦の政府系ファンド。2018年1月1日をもって、国民福祉基金に統合された。
内訳は公表されていないが、2017年の総固定資本形成は政府主導の大規模なインフラ整備が牽引役となって前年同期比で増加したと見られる。
民間部門の設備投資については、金融緩和による政策金利の引下げで銀行貸出金利が個人向け・企業向けともに低下しており、これが投資を下支えしていると見られる(図表10)。ただし、原油価格の持ち直しによって2017年から改善基調にあった企業の景況感や鉱工業生産が足元で落ち込み始めており、当面注視が必要である(図表11)。
政府部門の総固定資本形成では、クリミア半島の実効支配に向けたケルチ海峡大橋の建設や中国向けガスパイプライン「シベリアの力」の建設など政府主導の大規模なインフラ整備が本格化したことが、総固定資本形成を押し上げたと見られる。
2017年の純輸出は、国内需要の回復によって輸入が輸出を上回って増加した結果、成長率寄与度がマイナスに転じた。
2016年年初から原油価格の持ち直しによって、為替がルーブル高方向に進み、インフレ率は低下した。2017年も引き続き原油価格が持ち直すとともに、好調な穀物生産によって食料品価格が下落したこともあいまって、2017年平均のインフレ率はインフレ目標(4.0%)を下回る3.7%まで低下している。
ロシア連邦中央銀行は、16年6月以降、断続的に利下げを行い、17年12月時点で政策金利は7.75%となっている。中央銀行は17年12月の声明の中で足元のインフレ率がインフレ目標の4.0%を下回っていることから、18年上半期も更なる利下げの可能性を示唆した。
4――2018年経済の展望
その他の景気の押上げ要因としては、緩やかなインフレと金融緩和の継続が挙げられる。インフレ率については、2017年の食料品価格下落による押下げ効果こそ剥落するだろうが、2018年のルーブルは底堅く推移すると予想されることから、輸入物価の上昇を通じたインフレ率の大幅な上昇懸念は小さいと見られる。18年平均のインフレ率は17年並みの4.0%と予想する。中央銀行が18年上半期の追加利下げを示唆していることから、インフレが緩やかに推移する限り、金融緩和は継続するだろう。しかし、政策金利は小幅な利下げが数度行われた後は据え置かれ、18年末は7.0%と予想する。また、6月から7月にかけて開催されるサッカーワールドカップでは、海外観光客によるインバウンド効果が見込まれ、小幅ながら景気の押上げ要因になるだろう。
需要項目別に見ると、民間消費は、2018年のインフレ率が2017年並みに推移し、引き続き堅調に推移すると見られるため、前年比3.0%増を見込む。政府消費は、緊縮的な財政政策によって2018年度の歳出が前年度並みと予想されるため、前年比0.0%増を見込む。総固定資本形成は政府主導の大規模な投資の効果が剥落すると見られるため、前年比3.0%減を見込む。純輸出は、引き続き内需の拡大によって輸入が増加するも、原油価格が昨年を上回ることで輸出の増加額が輸入の増加額を上回ると見られ、前年比寄与度を+1.0%ポイントと見込む。
なお、3月18日に実施される大統領選挙では、プーチン大統領が再出馬を表明しており、再選することは確実視されている。これによって、プーチン政権は次期任期終了の2024年まで存続するだろう。また、プーチン政権が継続することで欧米諸国の経済制裁は長期化することが予想される。
6 ブレント原油価格はヨーロッパの原油価格の指標。ウラル原油価格はロシアの輸出油混合物の価格設定に用いられる指標で、ブレント価格に近い。
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神戸 雄堂
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(2018年01月30日「基礎研レター」)
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