2018年01月30日

【12月米個人所得・消費支出】消費支出(前月比)は、前月から鈍化も堅調な伸びが持続

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を上回る一方、個人消費は市場予想に一致

1月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は12月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.4%(前月値:+0.3%)となり、前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%を上回った。個人消費支出(名目値)は前月比+0.4%(前月値改定値:+0.8%)と、+0.6%から上方修正された前月を下回ったものの、市場予想の+0.4%に一致した(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は前月比+0.3%(前月改定値:+0.5%)と、こちらは+0.4%から上方修正された前月を下回ったほか、市場予想の+0.4%も下回った(図表5)。貯蓄率1は2.4%(前月:2.5%)と前月から低下した。

一方、価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月:+0.2%)と前月から伸びが鈍化、市場予想の+0.1%には一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.2%(前月値:+0.1%)と、こちらは総合指数とは対照的に前月から伸びが加速した一方、市場予想(+0.2%)には一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.7%(前月値:+1.8%)と前月から伸びが鈍化、市場予想(+1.7%)に一致した。コア指数は+1.5%(前月値:+1.5%)と、前月、市場予想(+1.5%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:貯蓄率は05年9月以来の水準に低下

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 12月の名目個人消費(前月比)は、年末商戦の好調もあって高い伸びとなった前月からは伸びが鈍化したものの、堅調な伸びを維持した(図表1)。

一方、所得対比では所得の伸び(+0.35%)が消費の伸び(+0.40%)を下回ったことから、貯蓄率は05年9月(2.3%)以来の水準に低下した。貯蓄率は17年2月に4.1%をつけてから概ね低下基調が持続している。貯蓄率の低下は、雇用不安の後退や堅調な株価などを背景に消費者センチメントが堅調なこともあって、消費意欲が高いことを示していると言えよう。

一方、物価(前年同月比)は総合指数で前月からの低下がみられたが、総合指数、コア指数ともに8月につけた+1.4%、+1.3%は上回っており、物価上昇スピードは鈍いものの、物価は底入れした可能性が高いと判断できる。

3.所得動向:賃金・給与、利息・配当ともに伸びが加速

個人所得の内訳をみると賃金・給与が前月比+0.5%(前月:+0.4%)と2ヵ月連続で伸びが加速したほか、利息・配当収入も+0.7%(前月:+0.5%)とこちらも前月から伸びが加速した(図表2)。労働需給のタイト化が持続しているほか、製造業や建設業などの業種で熟練労働力の不足が深刻化していることから、賃金・給与は今後も底堅い伸びが続こう。

個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は+0.3%(前月:+0.3%)と、17年9月以降、4ヵ月連続で堅調な伸びが持続している(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベースは前月比+0.2%(前月:横這い)と、前月から伸びが加速した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:財消費の伸びが前月から大幅に鈍化

名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.1%(前月:+1.3%)と前月から伸びが大幅に鈍化する一方、サービス消費は+0.5%(前月:+0.5%)と前月並みの伸びを維持した(図表4)。

財消費では、耐久財が+0.7%(前月:+0.9%)となった。娯楽財・スポーツカーが▲0.3%(前月:+2.6%)と前月からマイナスに転じほか、家具・家電も+0.5%(前月:+1.1%)と伸びが鈍化した。一方、自動車・自動車部品が+1.8%(前月:▲1.0%)と前月からプラスに転じたことで耐久財消費を下支えした。

非耐久財は、▲0.2%(前月:+1.5%)と前月からマイナスに転じた。ガソリン・エネルギーが▲3.3%(前月:+6.8%)と高い伸びとなった前月の反動もあり、大幅なマイナスに転じたほか、衣料・靴も▲0.1%(前月:+1.4%)と小幅ながらマイナスに転じた。
一方、サービス消費は、娯楽が+0.4%(前月:+1.2%)、医療サービスも+0.2%(前月+0.4%)と前月から伸びが鈍化したものの、住宅・公共料金が+0.8%(前月:+0.4%)となったほか、外食・宿泊が+0.7%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速した。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前月比では押下げも、前年同月比では物価押上げが持続

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲1.2%(前月:+4.3%)と前月の高い伸びからマイナスに転じ物価を押下げた(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.1%(前月:▲0.1%)とこちらは小幅ながらプラスに転じ物価を押上げた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+7.4%(前月:+10.4%)と前月から伸びは鈍化したものの、こちらは物価の大幅な押上げとなっている(図表7)。最後に食料品価格指数は+0.8%(前月:+0.6%)と、6ヵ月連続のプラスとなったものの、総合指数を下回る伸びが持続している。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2018年01月30日「経済・金融フラッシュ」)

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