2017年12月29日

公的年金改革があると考える人はNISAやiDeCoに加入するか?-自助努力を進める可能性に関する実証分析

北村 智紀

文字サイズ

3――分析結果

利用したデータの記述統計をAppendix Aに示す。OLSを利用した回帰分析の推計結果をAppendix Bに示す。標準誤差は分散不均一性を考慮して算出している。列(1)~(3)は、(A) NISA制度を知らない人を被説明変数とする推計結果である。列(1)の年金額3割削減・可能性大の係数は負で有意、列(2)の支給開始年齢2歳引き上げ・可能性中と可能性大の係数は負で有意であった。当初の予測どおり、将来、公的年金額が削減される可能性が高い、あるいは、支給開始年齢が引き上げられることが高いと考える人は、可能性が低い人と比較して、NISA制度を知らない人が低下する傾向、つまり、NISA制度の認知度が高まる傾向が確認された。一方、列(3)の70歳まで働くの係数は負で有意、つまり、長く働くことで老後の生活費を補おうと考える人は、資産運用への関心が低まる傾向がある。列(4)~(6)は、(B) iDeCo制度を知らない人を被説明変数とする推計結果、列(7)~(9)は(C)個人年金保険を知らない人の推計結果である。これらの結果は、列(1)~(3)は、(A) NISA制度を知らない人と同様な傾向である。

Appendix Bの回帰分析の結果は、結果の解釈が難しい面もある。そこで、これらの推計結果を利用して、メインの説明変数別に (A) NISA制度を知らない人の比率を推計した結果が図表1のパネルAである。年金額3割削減の可能性が低いと考える人の(A) NISA制度を知らない人の比率は20.1%、可能性が高いと考える人は10.7%であり、その差は9.4%低下している(1%有意水準)。同様に、支給開始年齢が2歳引きあがる可能性が低いと考える人と、高いと考える人の差は-14.6%、70歳まで働く可能性が低いと考える人と、高いと考える人の差は-8.7%である。公的年金の改革があると考える人は、自助努力に利用できる税制優遇措置がある制度の認知率が高いことがわかる。一方、自助努力として長く働くことを考える人は、制度の認知率が低くなることがわかる。
図表1:NISA・iDeCo・個人年金の非認知率
図表1のパネルBは、同様に、(B) iDeCo制度を知らない人の比率を推計した結果である。年金額3割削減の可能性が低いと考える人と、高いと考える人の差は-8.8%、支給開始年齢が2歳引きあがる可能性が低いと考える人と、高いと考える人の差は-13.8%、70歳まで働く可能性が低いと考える人と、高いと考える人の差は-9.6%であり、パネルAの(A) NISA制度を知らない人の比率と同様な傾向である。図表1のパネルCは、同様に、(C)個人年金保険を知らない人の比率を推計した結果である。年金額3割削減の可能性が低いと考える人と、高いと考える人の差は-8.8%、70歳まで働く可能性が低いと考える人と、高いと考える人の差は-8.8%であり、パネルAの(A) NISA制度を知らない人の比率と同様な傾向である。一方、支給開始年齢が2歳引きあがる可能性については、低いと考える人と、高いと考える人とで有意な差は観察されなかった。
 
Xでシェアする Facebookでシェアする

北村 智紀

研究・専門分野

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【公的年金改革があると考える人はNISAやiDeCoに加入するか?-自助努力を進める可能性に関する実証分析】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

公的年金改革があると考える人はNISAやiDeCoに加入するか?-自助努力を進める可能性に関する実証分析のレポート Topへ