2017年12月25日

EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットについてのCPを公表(3)-欧州委員会に対する助言内容-

中村 亮一

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4|全体ティア1の20%までティア1として適格な資本手段
(1)欧州委員会からの助言要求内容
ティア1の適格基準を満たすとみなされる自己資本項目のリスト、それぞれの自己資本項目に対して、分類を決定する特徴の正確な記述を含む(指令2009/138 / EC第97条(1)及び第99条(a)の権限付与の下で)。

ティア1の適格基準を満たすとみなされる自己資本項目のリストは、払込済劣後相互会員口座、払込優先株式及び関連株式プレミアム勘定ならびに払込済劣後債務を含む。これらの項目には20%の量的制限がある。

EIOPAは、第94条(1)に定められた基準が引き続き満たされることを確実にするために、この量的限度が削除された場合、これらの項目に適用される詳細な適格基準が変更される必要があるかどうかを評価することが求められる。

(2)EIOPAの助言
EIOPAは2つのオプションを提案している。

オプション1(20%の制限を維持する)は、保険契約者及び保険金受取人の適切な保護を提供するために必要なソルベンシーIIティア1自己資本のプルデンシャルな品質を保護するために20%限度を維持することが必要との考え方であり、20%の制限を維持しないと、ハイブリッド商品に求められる特徴のいかなる変更も、資本品質の結果として起こる損失を完全に軽減することはできない、と考えている、とした。

なお、ディスカッション・ペーパーへの回答者は、誰もティア1資本の質の結果的に発生する低下を緩和するために必要な首尾一貫した行動とともにrT1の20%の制限の除去を支持していない、と述べている。

オプション2(ハイブリッドT1商品の品質を強化する)は、オプション1が受け入れられない場合に、ティア1自己資本の質を保護するために、少なくとも以下の変更を含むように規制を修正することを勧告する、としている。
a)rT1商品の最初の繰上償還日を発行後10年に延長
b)会社のSCRが適切なマージンを超えた発行日から10年から20年の間にのみ償還を認容
c)強制トリガーのいずれかに違反したときに、完全な償却を要求
d)一定の条件の違反に対する強制トリガーを変更

20.4.3.EIOPAの助言
オプション1:20%の制限を維持する

1539.EIOPAは、EIOPA-CP-16/008ディスカッション・ペーパーの回答者は、誰もティア1資本の質の結果的に発生する低下を緩和するために必要な首尾一貫した行動とともにrT1の20%の制限の除去を支持していなかったことを念頭に置いて、保険契約者及び保険金受取人の適切な保護を提供するために必要なソルベンシーIIティア1自己資本のプルデンシャルな品質を保護するために20%限度を維持することを欧州委員会に勧告する。

1540.EIOPAは、20%の制限を維持しないと、ハイブリッド商品に求められる特徴のいかなる変更も、資本品質の結果として起こる損失を完全に軽減することはできない、と考えている。しかし、EIOPAは、もし制限が除去されるならばハイブリッドティア1商品に求められる特徴を強化することを提案する上で、資本の質を維持するというプルデンシャルな要望と実際的な懸念の間のバランスを取ることを追求した。もし、ティア1ハイブリッドの品質が余りにも高すぎると、それらは実行可能ではない可能性があり、実際的な効果はハイブリッド商品がティア1で認識できない場合と同じになる。したがって、繰上償還日付のない永久的なものであることを要求するような、無期限のティア1に近い形でティア1ハイブリッドの品質を強化する一定の変更が検討されたが、比例性に基づいて適切と判断されなかった。

プション2:ハイブリッドT1商品の品質を強化する

1541.オプション1が受け入れられない場合、EIOPAは、ティア1自己資本の質を保護するために、少なくとも以下の変更を含むように規制を修正することを勧告する。
a)rT1商品の最初の繰上償還日が発行後10年に延長されることを要求する。
b)会社のSCRが適切なマージンを超えた発行日から10年から20年の間にのみ償還が認められることを要求する。
c)強制トリガーのいずれかに違反したときに、完全な償却を要求する。 そして
d)次のいずれかの条件の違反に対する強制トリガーを変更する。
・SCRをカバーする資格のある自己資本の額は、SCRの80%以下である。
・MCRをカバーする資格のある自己資本の額は、MCRと同等かそれ以下である。
・非遵守が最初に観察された日から2ヶ月以内にSCRへの遵守が再確立されない。

 

3―影響評価

3―影響評価

この章では、CPの第21章の「影響評価」の中から、保険業界にとって優先度が高いと考えられる項目についての概要を報告する。
1|金利リスク
金利リスクについては、オプション1(変更無し)とオプション2(低及びマイナスの金利を反映するように方法を変更する)の2つのオプションについて、コストベネフィット分析を行い、オプション2が優先されるオプションであるとしている。

オプション2のベネフィットとコストに関しては、以下のように記述されている。

1672.ベネフィットの面では、以下の効果を検出することが可能
・保険契約者 - 低利回り環境における金利リスクに対するリスク感応度が高い方法論により、リスク管理が促進され、保険契約者にとって有益となる。
・業界 - リスク管理の観点から、調整された方法論は、低利回り環境でよりリスク感応度が高い結果を提供し、その結果、会社のリスクプロファイルをよりよく把握する。複雑さの観点から、この方法論は比較的単純で透明なままであるため、変更された方法論は複雑さに関して事業者に余分な負担を生じさせない。
・監督者 - 金利リスクのSCRは、低及び中位の利回り環境で過小評価されないことがより確実である。

1673.コストの面では、以下の効果を検出することが可能
・保険契約者 - なし
・業界 - 主なコストは、金利リスクのために保有する必要がある資本要件の増加の可能性が高いこと
・監督者 - なし。金利リスクモジュールの理解、特に監督はより複雑にはならない。

定性的な影響評価については、既に前回の基礎研レポートの「2―1|金利リスク」において報告した。EIOPAは定量的な影響評価については、以下の2段階の影響評価アプローチを採用するとしている。その結果については2018年2月の欧州委員会への最終助言で共有されるとしている。

1678.第1ステップでは、EIOPAは、年次QRTデータを使用して影響評価を行うが、いくつかの制限がある。実際、負債のキャッシュフローは提供されているが、負債のキャッシュフローが金利に依存する場合の影響を評価することはできず、資産のキャッシュフローは提供されていない。資産側では、デュレーションを使用して近似を行うことができる(委任規則第103条参照)。この影響は、負債のキャッシュフローが金利に依存しない場合の会社に関連している。

1679.第2ステップでは、EIOPAは、負債のキャッシュフローが金利に依存する(すなわち、有配当事業)会社に関する情報要求を開始する。影響評価を各国のそのような事業を代表する会社に限定し、負担を軽減することが提案されている。結果は、2018年2月の欧州委員会への最終的な助言で共有される。

2|繰延税金の損失吸収能力(LAC DT
繰延税金の損失吸収能力(LAC DT)に関しては、国家監督当局を通じた(再)保険会社への情報要求を通じて、最終的な助言の中で、会社のSCRカバレッジ比率に対する政策オプションの影響に関する統計を提供する、としている。

21.19.1.政策オプション
1785.LAC DTに関する現在の規制は、ストレス課税後の利益の予測における異なる仮定の結果として、類似のリスクポジションにおける類似の会社が異なるLAC DTを認識することを妨げるものではない。このため、またEIOPA規制(2010年11月24日:規制(EU)1094/2010)第8条及び第16条に基づき、EIOPAは類似の会社についてのこれらの予測における差異を軽減するためのいくつかの政策オプションを提出する。

21.19.2.影響分析
1786.これらの政策オプションの影響を分析するために、EIOPAは、国家監督当局を通じた(再)保険会社への情報要求を開始した。それは、EIOPAが、予測期間、資産収益率、ショック後の新契約の経済的利益、将来の経営行動など、その提案を較正することも可能にする。

1787.最終的な助言の中で、EIOPAは、会社のSCRカバレッジ比率に対する政策オプションの影響に関する統計を提供する。

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中村 亮一

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