2017年12月25日

EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットについてのCPを公表(3)-欧州委員会に対する助言内容-

中村 亮一

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主要原則に関する結論は、以下の通りである。

17.4.3.主要原則に関する結論
1379.EIOPAは、可能性の高い利用が貸借対照表上の正味繰延税金負債(DTL)によって示されている場合のLAC DTの一部である、EEA全体でLAC DTの約1000億ユーロの75%以上に関して、国家監督当局(NSAs)が同様のアプローチを取っている証拠を提供した。そのポジティブな位置を認識しながら、可能性の高い利用が将来利益によって示されている場合のLAC DTの残りの部分に関しては、NSAsは異なるアプローチを取っている。税制でキャリーバックが適用される場合、NSAsは、監督者が同様のアプローチを取っているLAC DTの75%を増加させて、LAC DTの可能性の高い利用を示すためのその使用を認めている。

1380.EIOPAは、EEA全体でLAC DTの75%超に関してNSAsが同様のアプローチを取っているというポジティブな立場を認識している。差異がある残りの部分のうち、EIOPAは、差異が、財政制度、リスクプロファイル又は資産と負債の長さとデュレーションの違いに起因している場合、LAC DTの差異が正当化されると考える。EIOPAは財政制度を所与として取り扱う。より高い税率又はより有利なキャリーフォワード及びキャリーバックの可能性を持つ税制を有する管轄区域における会社は、他の全てが同等であれば、より高いLAC DTを有するであろう。

1381.EIOPAは、bSCR*ショック損失後に推定される将来利益の予測に依存するLAC DTの部分に関わる幅広い判断を観察した。ソルベンシーIIの貸借対照表及びSCR計算の評価は、専門家による判断が必要となるため、主観性それ自体は問題ではない。しかし、通常、貸借対照表評価及びSCR計算に対する専門家による判断は、同様の資産及び負債とリスクの比較的小さな範囲の可能な結果につながる。将来利益によって示されるLAC DTの部分に関して、監督当局は、同様の会社に対する広範な前提及び結果を観察した。

1382.この理由から、またEIOPA規則(2010年11月24日:規制(EU)1094/2010)の第8章及び第16章により、EIOPAは、標準式の下でのLAC DTの計算、特に繰延税金の増加の可能性の高い利用を示すために使用されるストレス後の課税利益の予測に対して、コンバージェンスを達成するよう努力しており、今後はこうしたコンバージェンスを確実にするための適切な優良事例を検討する予定である。

1383. LAC DTに関するこの章では、EIOPAは、ガイドライン、意見又は監督上のハンドブックのような監督上のコンバージェンスツールを用いてよりよく対処できる要素から、委任規則への可能な変更に関しての欧州委員会への助言の一部となる要素を区別しなかった。このため、この章では最後に青いボックスの助言は含まれていない。ステークホルダーのコメントを考慮してさらに検討した後、EIOPAは合理的な決定を下す。

1384. EIOPAは、監督上のコンバージェンスを促進し、3つの懸念に取り組むために、いくつかの重要な原則を検討する。
・名目上の繰延税金資産(DTA)の利用に対する将来利益についての不確実性
・これらの将来利益の予測に関係する複雑さ
・名目上のDTAの可能性の高い利用に関連する広範囲の判断による不公平な競争条件

1385.これらの重要な原則は次のとおりである。
・ショック損失後のMCRとSCRの遵守の役割
・新契約からの将来利益 - 予測の前提
・新契約からの将来利益 - 新契約からの将来利益の予測期間
・新契約からの将来利益 - 新契約販売の予測期間
・資産の利益からの将来利益
・技術的準備金を超えた資産の収益からの将来利益 –予測期間
・将来の経営行動
・ガバナンス制度の役割
・監督者の報告と開示

1386.比例性はこれらの原則の実施において重要な役割を果たすべきである。複雑さの異なるレベルは、標準式、標準式の簡素化された計算又は内部モデルを介して適切に処理することができる。EIOPAは、重要な原則を異なるレベルの複雑さにおいてどのように使用できるかについて、ステークホルダーからのコメントを受けたいと考えている。

2|リスクマージン
(1)欧州委員会からの助言要求内容
ソルベンシーII指令第77条(5)によれば、リスクマージンは、保険及び再保険義務を生涯にわたって維持するのに必要なSCRと同等の適格自己資本の金額を提供する費用を決定することによって計算される。リスクマージンは、技術的準備金の価値が、(再)保険会社が(再)保険義務を引き継いでこれを満たすために必要になると予想される額と同等であることを保証するようなものである。

SCRレビューの一環として、EIOPAは以下のことを求められる。
・保険会社の貸借対照表におけるリスクマージンの相対的な規模に関する情報を提供する。
・変化する市場環境を考慮して、リスクマージンの計算に適用される方法及び前提が引き続き適切であるかどうかを評価する。特に、EIOPAは、資本コスト率(CoCレート)を見直すように求められる。

(2)EIOPAの助言
今回、EIOPAは、CEIOPS3が2009年のリスクマージンに関する技術的助言に適用したアプローチと同じアプローチに従って、CoCレートを見直している。具体的には、以下の通り
・資本コスト(Cost of Capital)は持分コスト(cost of equity)に等しい。
・持分コストは、以下を含む資本資産価格モデル(CAPM)で計算される。
・株式リスクプレミアム:投資家が株式クラスに投資するためのリスクフリーレートを上回る追加リターンを表す。
・ベータ・ファクター。これは、より幅広い市場と比較しての保険業界の株価実績を反映する。
・結果は、CoCのCAPM推定に反映されない経済的側面を考慮して調整される。

株式リスクプレミアムの見積りに関して、過去のリターンモデルと配当割引モデルが分析されたが、EIOPAは、過去のリターンモデルを使用することを提案している。

最終的に、6%から8%の範囲のCoC計算結果を考慮して、EIOPAは、現在適用可能な6%のCoCレートを変更しないことを勧告している。

CoCレートについては、業界サイドからはその引き下げが期待されていただけに、この結果は失望をもたらすものとなっている。改めて、現在の考え方に基づくリスクマージンの規模と感応度の高さを認識させられる形になっている。

18.4.3.EIOPAの助言
1444.EIOPAは、CEIOPSが2009年のリスクマージンに関する技術的助言に適用したアプローチと同じアプローチに従って、CoCレートを見直した。
・資本コスト(Cost of Capital)は持分コスト(cost of equity)に等しい。
・持分コストは、以下を含む資本資産価格モデル(CAPM)で計算される。 ・株式リスクプレミアム:投資家が株式クラスに投資するためのリスクフリーレートを上回る追加リターンを表す。
・ベータ・ファクター。これは、より幅広い市場と比較しての保険業界の株価実績を反映する。
・結果は、CoCのCAPM推定に反映されない経済的側面を考慮して調整される。

1445.株式リスクプレミアムの見積りに関して、過去のリターンモデルと配当割引モデルが分析さ れた。両方のモデルの長所と短所を考慮して、EIOPAは、過去のリターンモデルを使用して株式リスクプレミアムを導出することを提案する。特に、これらのモデルは、CoCレートの初期較正、時間に対するCoCレートのより強い安定性及び前提への少ない依存性で、方法論的整合性を確保している。

1446.6%から8%の範囲のCoC計算結果を考慮すると、EIOPAは、現在適用可能な6%のCoCレートを変更しないことを勧告する。

 
3 CEIOPS(Committee of European Insurance and Occupational Pensions Supervisor: 欧州保険年金監督委員会)は、EIOPAの前身
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中村 亮一

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