2017年12月20日

資金循環統計(17年7-9月期)~個人金融資産は、前年比83兆円増の1845兆円に、2四半期連続で過去最高を更新

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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3.その他注目点: 日銀と海外勢の国債保有シェアがさらに上昇

2017年7-9月期の資金過不足(季節調整値)を主要部門別にみると、従来同様、企業(民間非金融法人)と家計部門の資金余剰が政府(一般政府)の資金不足を補い、残りが海外にまわった形となっている(図表10)。前期(4-6月期)との比較では、企業の資金余剰が3.6兆円減少した一方で、家計の資金余剰が5.8兆円増加している。7-9月期は個人消費や住宅投資が減速したため、その分家計の資金余剰が押し上げられた可能性が高い。
 
9月末の民間非金融法人のバランスシートを見ると、現預金残高は259兆円と6月末(255兆円)から4兆円増加し、過去最高を更新した(図表11)。例年、多くの企業の上期末である9月末には現預金が厚めに積まれるという季節要因もあるが、前年比でみても13兆円増加している。

ただし、この間の借入の増加幅は20兆円と現預金の増加幅を上回っており、借入から現預金を控除した純借入額(150兆円)も前年比で6兆円増加している。
(図表10)部門別資金過不足(季節調整値)/(図表11)民間非金融法人の現預金・借入
(図表12)預金取扱機関と日銀、海外の国債保有シェア/(図表13)国内銀行の資金フロー(主な資産)
国庫短期証券を含む国債の9月末残高は1087兆円で、6月末から2兆円増加した。その保有状況を見ると(図表12)、これまで同様、預金取扱機関(銀行など)の保有高が減少(183兆円、6月末比14兆円減)し、保有シェアも低下した(6月末18.2%→9月末16.8%)。一方、大規模な国債買入れを継続している日銀の保有高は引き続き増加(445兆円、6月末比8兆円増)し、シェアも40.9%(6月末は40.3%)と上昇している。日銀は近頃、国庫短期証券の残高を落としているうえ長期国債の買入れペースも縮小しているため、増勢はやや鈍化しているものの、今後も大規模買入れの継続に伴って残高シェアが上昇していくことになる。

なお、海外部門の国債保有高は120兆円と6月末から3兆円増加し、シェアも11.0%(6月末は10.8%)とやや上昇した。海外勢はドル調達コストの関係で有利な条件で円を入手できる状況が続いており、超低金利にもかかわらず国債への資金流入傾向が続いている。
 
最後に、国内銀行の7-9月期の資金フローを確認すると(図表13)、近年同期と同様、国債の流出超過と現預金・貸出の流入超過がみられるが、前年と比べて国債の流出額、現預金の流入額がそれぞれ拡大した。日銀に国債を売り、その資金を日銀当座預金に積み上げる動きが活発化したためとみられる。

なお、対外証券投資は1.5兆円の流出超過(取り崩し)となった。4-6月期に小幅な流入超過に転じたものの、再び流出超過となった形だ。一昨年秋の米大統領選後に米国債価格が急落し、保有国債に損失が発生したことなどを受けて、地銀などで外債投資を手控える姿勢が続いているほか、ドル調達コストの高止まりが投資の抑制要因になっているとみられる。
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2017年12月20日「経済・金融フラッシュ」)

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