2017年12月18日

繰り返される「年初の円高」、2018年初も要警戒 ~マーケット・カルテ1月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月後の見通し ドル円は今月上旬に米税制改正手続きの前進やつなぎ予算の成立を受けて113円台に上昇したが、中旬のFOMCで利上げペース加速が示唆されなかったことを受けて下落、足元は112円台後半にある。

今後もしばらくはドルの上値が重く、むしろ円高に注意が必要な時間帯になりそうだ。米物価は低迷を続けており、利上げ観測が盛り上がることは当面期待できない。また需給面では、投機筋の円売りポジションが積み上がっている。そうした中で、下振れリスクへの警戒が高まれば、リスク回避の円買いが発生しやすい。世界を見渡すと、北朝鮮問題、中東の混乱、中国経済の減速、ロシアゲート問題など多くのリスクが存在している。振り返ると、2014年以降、毎年年初にリスク回避等による円高が進行してきたが、2018年初も円高に振れる場面がありそうだ。ただし、春先になると、米税制改正の効果もあって米経済・物価に加速の兆しが出てくることで、ドルが買い戻されるだろう。3ヵ月後の水準は114円台と予想している。

ユーロ円は、今月半ばにかけて133円台での推移を続けていたが、ECB理事会で緩和継続に前向きな姿勢が示されたことで下落し、足元は132円台半ばにある。今後もユーロ圏の好調な景気がユーロ高圧力となる一方で、反EU派の台頭が予想されるイタリア総選挙などの政治リスクがユーロ安圧力になりそうだ。また、ECBは緩和終了を急がない姿勢を示しているため、金融政策面からのユーロ高圧力も抑制される。ユーロ円は方向感が出にくく、3ヵ月後の水準は現状比横ばい圏内と見ている。

長期金利は、米金利が伸び悩むなかタイトな需給環境が意識され、足元は0.04%付近で推移している。当面は地政学リスクなどへの警戒に伴う安全資産需要もあって低迷が予想されるが、春先には、米経済・物価に加速の兆しが出てくることで、米金利の上昇が波及するだろう。3ヵ月後の水準は0.07%付近を予想している。
 
(執筆時点:2017/12/18)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

(2017年12月18日「基礎研マンスリー」)

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