2017年12月18日

EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットについてのCPを公表(2)-欧州委員会に対する助言内容-

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3|グループレベルでの通貨リスク
(1)欧州委員会からの助言要求内容
EIOPAは、通貨リスクをグループ化するアプローチが、グループのリスク管理に与えられるインセンティブを考慮して、グループがさらされているリスクを適切にカバーしているかどうかを調査し、必要に応じて修正を提案することを求められている。

・通貨リスク計算に関しての標準式の下でのソルベンシー資本要件を計算するための会計連結ベース手法の適用(指令2009/138 / ECの第234条の権限の下で)。

・標準式における通貨リスクの計算は、関連する会社のソルベンシー資本要件を、当該会社の資産及び負債が表示されている通貨でカバーするために自己資本を保有することにペナルティを課す可能性がある。

したがって、EIOPAは以下のことを求められる。

・自己資本を保有するために保険グループによって選択された通貨に関する情報を提供する。

・グループのリスク管理に与えられたインセンティブを考慮して、グループの通貨リスクに対して取られるアプローチが、グループがさらされているリスクを適切にカバーしているかどうかを調査し、必要に応じて修正を提案する。

(2)EIOPAの助言
EIOPAは、通貨のエクスポジャーがグループ毎に大きく異なっている実態を明らかにした。

・294のグループのうち38グループは資産の50%以上(25グループは60%超)を外貨建てで保有

・24のグループが30以上の通貨、9グループが40以上の通貨、5グループが50以上の通貨にさらされている。

EIOPAは、有意な通貨リスクエクスポジャーを有するグループに、通貨リスクサブモジュールの計算の目的で、連結勘定に使用されるもの以外の「現地」通貨を選択する柔軟性を提供するように勧告し、この選択は、グループの技術的準備金又は自己資本の重要な金額が表示される通貨などの客観的基準に基づいている必要がある、としている。

9.4.2. EIOPAの助言
599.EIOPAは、通貨のエクスポジャーがグループ毎に大きく異なる可能性があることを発見した。

600.いくつかのグループのデータ品質に問題があるため、合計294のグループが評価された。このうち、38グループは資産の50%以上を外貨建てで保有している(25グループは60%超が外貨建て)。

601.資産が保有されている通貨数に対するエクスポジャーは、グループによって大きく異なる。1つのグループによる最大エクスポジャーは60の異なる通貨に対してであり、中央値は4である。30以上の通貨にさらされている24のグループ、40以上の通貨にさらされている9つのグループ、50以上の通貨にさらされている5つのグループがある。

602.現在の標準式が、グループレベルでの計算の簡素化とエクスポジャーが重要ではない場合のリスク感応度との間の適切なトレードオフであると思われる場合、これは有意なエクスポジャーを伴うグループでは異なる可能性がある。

603.それゆえ、EIOPAは、これらのグループに、通貨リスクサブモジュールの計算の目的で、連結勘定に使用されるもの以外の「現地」通貨を選択する柔軟性を提供するように勧告する。この選択は、グループの技術的準備金又は自己資本の重要な金額が表示される通貨などの客観的基準に基づいている必要がある。

4|未格付債務
(1)欧州委員会からの助言要求内容
EIOPAは、信用度ステップ2に関連する較正を受けることが認められる一定の商品を特定するために、指定されたECAI(External Credit Assessment Institution:外部信用評価機関)による信用評価が利用できない債券及びローンに適用可能な明確かつ決定的な基準を提供するよう求められる。

EIOPAが、より良い又はより低いリスクプロファイルを有する商品を特定する代替基準を特定する場合、これら2つのタイプの基準もまた提供されるべきである。対応する商品は、次に、それぞれ信用度ステップ1及び3に関連する較正を受けることが認められる。

かかる基準は、特に財務諸表に基づいて、債務者の財務状態に関連する可能性がある。

かかる基準は、関連する商品の特徴、特に債務不履行の場合の信用階層におけるそのポジションと、債務者に関する投資家に提供される透明性に関連する可能性がある。

信用評価を提供する際にECAIsによって検討される可能性のある特徴に加えて、そのような基準は、指定されたECAIによる信用調査が入手可能でない債券及びローンへの投資に関連するリスクを適切に管理する能力を確保するため、保険会社自身のリスク管理制度に関連している可能性がある。

債務者及び関係する商品に関連する基準は、指名されたECAIによる信用評価が利用できないことを所与として、リスク管理に関連する基準が結果として、ECAIによる信用評価が利用可能な債券及びローンへの投資と比較して、保険会社による強化されたリスク管理につながるということを考慮して、十分なリスク感応性が導入されることを確実にするように設計されるべきである。

(2)EIOPAの助言
「内部評価アプローチ」について、その範囲(外部評価なし、借り手の種類、債務の種類)、基準(一般的枠組み、基準の財務比率、基準利回り)、追加条件(借り手、債務項目、基準内部プロセス)についての基準を勧告している。

また、「承認された内部モデルの結果の使用」に関して、ガバナンスとリスク管理の基準(引受けプロセス、透明性基準、チェリーピッキング/不利な選択の回避基準、モデルの機能に関する透明性の基準)についての基準を勧告している。

具体的な基準の内容は、以下の通りである。

10.4.3.EIOPAの助言
内部評価アプローチ
741.「基準」のセクションに概説されている要件が全て満たされている「範囲」の項に記載されている債券及びローンには、CQS(Credit Quality Steps:信用度ステップ)2のリスクファクターが割り当てられている場合がある。これには、リスク費用が内部評価アプローチで決定される債務項目と承認された内部の結果に基づいてリスク費用が決定される債務項目の合計が、全ての投資の5%を超えない、という制約がある。

範囲
外部評価なし
742.指定されたECAIによる信用評価が委任規則第5条に従って利用できない債務項目 借り手の種類
743.法人が発行した債務
744.金融・インフラ部門を除く全ての産業
745.借り手は、保険会社と同じグループに属していない。

債務の種類
746.ローンと債券の両方
747.シニアエクスポージャーのみ

基準
一般的枠組み
748.債務項目は、以下の条件を満たしている。
i.借り手の財務比率は、「基準財務比率」の項に記載されている要件を満たしている。
ii.借り手の負債の利回りは、「基準利回り」の項に記載されている条件に準拠している。
iii.借り手及び債務項目は、「追加条件」の項の要件を満たしている。
iv.「基準の内部プロセス」の項に記載されている要件を満たす内部プロセスは、債務がCQS 2の格付け付債務と同様のリスクを有することを示している。

基準の財務比率
749.臨界値のアプローチ:借り手の関連する財務比率は、該当する場合にはそれぞれの臨界値を上回るか下回る。
750.加重平均アプローチ:借り手の関連財務比率の加重平均は、臨界値よりも大きいか又は等しい。

基準利回り
751.保険会社が投資する債務と借り手がこれまでの3年間に発行した同様の債務に関する利回りは、以下のパラグラフで定義されるそれぞれの該当する臨界値を超えてはならない。
752.債務項目に対するそれぞれの関連する臨界値は、以下の要件を満たす2つの指数の発行時における利回りの平均である。
i.外部格付取引債券の幅広いインデックス
ii.構成債券は、債務項目と同じ通貨建てである。
iii.債券はそれぞれ2と4のCQSを有している。

追加条件
借り手
・有限責任を有する会社
・EEA(欧州経済地域)に設立
・EEA又はOECD諸国において収益の大部分が生じる。
・信用イベントなしで少なくとも10年間営業している。
・過去3年間、委員会勧告(2003/361 / EC)で定義された小規模企業よりも大きい。
・借り手は、少なくとも半年毎に監査済みの財務データを貸し手に提供し、信用リスクに影響を与える重要な出来事を通知することを、契約上義務付けられている。

債務項目
・優先債務。当該項目及びその他の同等商品は、法定請求、受託者及びデリバティブの取引相手を除き、全ての他の請求の上位にある。
・固定又は変動金利ベースでの定期的なクーポン支払いの形で、満期又はそれ以前の償還支払を返済する債券又はローン。仕組債、担保付有価証券及びデリバティブは除外される。

基準内部プロセス
i.会社は、債務項目の内部信用評価を生成し、それを信用度ステップ3以下又は信用度ステップ2以上の2つのカテゴリーのいずれかに割り当てる必要がある。
ii.内部評価と割当は「適格」債務項目を確実に識別する。適格債務項目に対して、スプレッドリスクサブモジュールのTitle I第1章第2項に従って決定された割り当てられた信用度ステップ2を有する債券及びローンとしての処理は、リスクを適切に反映する。
iii.評価は、負債項目に関連する信用リスクに重大な影響を及ぼす全てのファクターをカバーする必要がある。
iv.内部信用評価で考慮される要素には、以下が含まれるが、これらに限定されるものではない。
・競争上の地位
・経営の質
・財務方針
・カントリーリスク(関連する場合)
・約款
・会社の経歴(営業年数など)
・分散化/規模等
v.評価は、関連する全ての情報(量的及び質的の両方)を使用すべきである。
vi.各債務項目の内部評価と割当は十分に文書化されなければならない。
vii.このプロセスでは、外部格付を有する同等の企業の特性が考慮される。
viii.内部評価は、引受機能とは独立している。
ix.内部評価は定期的な検証の対象となる。

承認された内部モデルの結果の使用
753.保険会社と銀行がローンの共同投資に先立って同意する場合、保険会社は
、「ガバナンス及びリスク管理の基準」の項に記載された条件が満たされていることを条件として、「信用格付けステップの決定」の項に規定された要件に従うこの合意の下で引き受けられた全てローンに対するリスクファクターを決定する。これは、リスク評価が内部評価アプローチで決定された債務項目と、承認された内部評価の結果に基づいてリスク費用が決定された債務項目の合計が、全ての投資の5%を超えないという制約がある。アプローチをサブセットにのみ適用することはできない。

754.貸付のリスクファクターは、委任規則第176条(4)及び(5)に従って決定されるよりも高くなる可能性がある。

755.保険会社は、適用可能な全ての要件(例えば、プルーデントパーソン原則)の遵守責任を負い、内部モデルの結果に疑問を投げかけなければならない。

ガバナンスとリスク管理の基準
i.引受プロセス
a. EU又はEEAのIRB(Internal Ratings-Based)銀行のみが対象となる。
b.銀行と保険会社は、引き受けるローンの種類と適用される評価基準について事前に同意する。
c.借入企業は、EU又はEEAに設立された企業であり、EEA又はOECD諸国の収入の大部分は、過去3年間に欧州委員会勧告(2003/361 / EC)で定義された小規模企業よりも大きい。

ii.透明性基準
d.銀行は、引受プロセス、特に基準、組織構造及び統制について十分な詳細を提供する。
e.銀行は、全ての融資申込み(すなわち、拒否されたものもまた)に関するデータを提供する。
f.銀行は、融資申込みが拒否された理由の詳細を提供する。

iii.チェリーピッキング/不利な選択の回避基準
d.銀行は、貸出金の名目価値の少なくとも50%のエクスポジャーを保持している。
e.同じ引受基準が、銀行が単独で引き受ける他の比較可能な貸出金について、銀行と保険会社が共同投資するローンに適用される。
f.保険会社は、事前定義された範囲にある全てのローンに投資する。

iv.モデルの機能に関する透明性の基準
銀行は、内部モデル及びその限界ならびにその妥当性及び有効性を理解するための情報を保険会社に提供する。特に
・モデルの使用に関する情報(すなわち、入力/リスク要因、リスクパラメータの定量化/方法、履歴及び方法論)
・モデル使用に関する情報(すなわち、内部使用、報告、自己資本要件の計算) ・モデル検証及びその他のプロセスに関する情報、モデルの妥当性(すなわち、検証フレームワークと結果、内部監査結果)

信用度ステップの決定
756.信用度ステップは、モデルが事前に定義されたテーブルに基づいて生成するデフォルトの確率のマッピングに基づいて決定される。
757.マッピングが適切な結果をもたらすことを保証するために、内部モデルにさらなる基準が存在する可能性がある。

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中村 亮一

研究・専門分野

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