2017年12月14日

【12月米FOMC】予想通り、政策金利を0.25%引き上げ。18年の年3回利上げ見通しを維持

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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4.会見の主なポイント(要旨)

記者会見の主な内容は以下の通り。
  • 金融政策変更
    • 今回の政策金利引き上げは、物価が2%に近づくことを促進しながら、強い労働市場を維持するための措置。
    • 自然利子率は非常に低い水準になっていることから、政策金利の緩やかな引き上げが正当化される。
    • 当面自然利子率は、過去数十年の水準を下回るとみられており、FOMC参加者のFF金利見通しが低位に留まっているのと整合的。
 
  • 税制改革の効果
    • 今回のFOMC参加者の見通しで、成長率や失業率が上方修正されたのは予想者(16名)全員が税制改革の効果を予想に織り込みに行ったため。
    • 一方、経済への影響については現段階で程度や時期など非常に不透明である。
    • 実効税率の引き下げや、設備投資における即時償却は設備投資の後押しが期待できる。資本形成が促進されることで生産性や潜在成長率が改善する可能性。
    • (税制改革に伴う債務残高の増加は将来的な財政余地を狭めないか)足元の債務残高は異常に高くはないが、低い訳でもない。ベビーブーマーの引退によって債務残高が将来的に増加するとみられることもあって、債務残高の増加は財政出動の余地を狭める可能性。
    • (トランプ大統領が掲げる4%成長達成の可能性)現段階で経済への影響を評価するのは難しい。4%成長が達成できるならFRBとしては歓迎だが、達成は困難だろう。
 
  • インフレ動向
    • 今年に入っての予想外のインフレ率低下は、広範な経済状況と無関係な一時的な要因によると引き続き考えている。
    • インフレは今後加速し、数年以内に物価目標に達すると予想しているが、インフレに対する理解は完璧ではないため、引き続き注意深く動向を見守る。
 
  • パウエル新議長の評価
    • パウエル氏とは同僚として何年も一緒に仕事が出来て光栄に思う。
    • パウエル氏はFRBを非常によく理解しており、価値を共有している。
    • パウエル氏はこれまで金融政策決定で反対票を投じたことがない。
    • FRB内には、金融政策に対する緩やかなアプローチを採用するという強いコンセンサスが存在する。

5.FOMC参加者の見通し

FOMC参加者(FRBメンバーと地区連銀総裁の16名 )の経済見通しは(図表1)の通り。前回(9月20日)公表されたものと比較すると、18の成長率が+2.1%から+2.5%に引き上げられるなど、成長率が上方修正されたほか、失業率も上方修正(失業率は低下)された。一方、インフレ率については、17年が+1.7%に+0.1%ポイント引き上げられたものの、全般的に前回予想から据え置きとなった。
(図表1)FOMC参加者の経済見通し(12月会合)
(図表2)政策金利見通し(年末時点) 一方、政策金利の見通し(中央値)は、20年2.88%から3.01%に上方修正されたほかは概ね前回見通しが維持された(図表2)。

この結果、18年は年3回(合計0.75%)、19年は年2回(合計0.50%)の利上げが見込まれている。

なお、政策金利見通しのドットチャートをみると、16名中7名が19年の政策金利が長期見通し(2.75%)を上回る水準になると予想しているほか、20年は同12名が長期見通しを上回る水準を予想していることが分かる。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2017年12月14日「経済・金融フラッシュ」)

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