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- 貸出・マネタリー統計(17年11月)~個人預金通貨の伸び率が統計開始以来の最高に
2017年12月11日
1.貸出動向: 4ヵ月連続で伸び率が鈍化
12月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、11月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.73%と前月改定値(同2.77%)からやや低下した(図表1)。水準としてはまだ高めと言えるが、伸び率の低下は4ヵ月連続となった。地銀(第2地銀を含む)の伸び率は前年比3.5%(前月も同じ)と横ばいを維持したが、都銀等の伸び率が同1.8%(前月は2.0%)と引き続き低下した(図表2)。
貸出の伸び率が9月以降大きく低下した主因は、前年にあったM&A資金など大口貸出の押し上げ効果が一巡したためとみられる。実際、大・中堅企業向け貸出の伸び率が9月に低下しており、昨年9月に大きく上昇した反動がうかがわれる(図表3)。
また、金融庁から問題視されたアパートローンやカードローンで自粛の動きが出ていることも影響している。7-9月の新規貸出額を見ると(図表4)、個人による貸家業向け設備資金(アパートローン)の伸びが前年比20.5%減とマイナス幅を拡大したほか、カードローンを含むとみられる個人の消費財・サービス購入資金向けも前年比5.0%増と3四半期連続で伸びが鈍化している。
貸出の伸び率が9月以降大きく低下した主因は、前年にあったM&A資金など大口貸出の押し上げ効果が一巡したためとみられる。実際、大・中堅企業向け貸出の伸び率が9月に低下しており、昨年9月に大きく上昇した反動がうかがわれる(図表3)。
また、金融庁から問題視されたアパートローンやカードローンで自粛の動きが出ていることも影響している。7-9月の新規貸出額を見ると(図表4)、個人による貸家業向け設備資金(アパートローン)の伸びが前年比20.5%減とマイナス幅を拡大したほか、カードローンを含むとみられる個人の消費財・サービス購入資金向けも前年比5.0%増と3四半期連続で伸びが鈍化している。
さらに、直近11月については、前年同月に円安が進行した影響でドル円レートの前年比での円安幅が縮小(ドル円レートの前年比は10月8.8%→11月4.4%、図表5)したことが、伸び率を押し下げた。円安は外貨建て貸出の円換算額を押し上げることで見た目の伸び率押し上げに働くため、円安幅の縮小は押し上げ効果の剥落を意味する。昨年12月はさらに大幅な円安が進行していたため、次回12月の銀行貸出は為替の影響でかなり押し下げられるだろう。
次に、為替変動等の影響を調整した実勢である「特殊要因調整後」の銀行貸出伸び率(図表1)1を見ると、直近判明分である10月の伸び率は前年比2.61%と9月の2.82%から低下している。9月から10月にかけてのドル円レートの円安幅(前年比)は若干拡大していたため、見た目(特殊要因調整前)の銀行貸出の伸び率低下(9月2.97%→10月2.77%)よりも若干低下幅が大きかった。
11月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、11月におけるドル円レートの円安幅(前年比)は既述の通りかなり縮小しており(図表5)、10月から11月にかけて、円安による押し上げ効果はかなり剥落したと考えられる。従って、11月の見た目の伸び率は前月から0.04%低下したが、特殊要因調整後の伸び率はむしろ0.1%強上昇したと考えられ、前年比2.7%台になったと推測される。
1 特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは10月分まで。
次に、為替変動等の影響を調整した実勢である「特殊要因調整後」の銀行貸出伸び率(図表1)1を見ると、直近判明分である10月の伸び率は前年比2.61%と9月の2.82%から低下している。9月から10月にかけてのドル円レートの円安幅(前年比)は若干拡大していたため、見た目(特殊要因調整前)の銀行貸出の伸び率低下(9月2.97%→10月2.77%)よりも若干低下幅が大きかった。
11月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、11月におけるドル円レートの円安幅(前年比)は既述の通りかなり縮小しており(図表5)、10月から11月にかけて、円安による押し上げ効果はかなり剥落したと考えられる。従って、11月の見た目の伸び率は前月から0.04%低下したが、特殊要因調整後の伸び率はむしろ0.1%強上昇したと考えられ、前年比2.7%台になったと推測される。
1 特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは10月分まで。
2.マネタリーベース: 増加ペースの鈍化がますます鮮明に
また、11月末のマネタリーベース残高は472兆円となり、前月末から5.1兆円減少した。11月は日銀当座預金の増加に繋がる国債の償還が少なく、マネタリーベースが増えにくいという事情もあるが、季節性を除外した季節調整済みの月中平均残高ベースでも、前月比2.7兆円増(年間33兆円増ペース)に過ぎない(図表8)。同じく季節性が除外されるマネタリーベース(末残)の前年比増加額を見ても、11月は51.7兆円と前月(59.0兆円)から大きく縮小しており、2013年7月以来の小幅に留まっている。日銀の国債買入れペースが次第に縮小していることが、マネタリーベース増加ペースの鈍化という形でますます現れている。
今後も、引き続き日銀の国債買入れによって市中に残存する国債残高が減少に向かうため、日銀の国債買入れペースはさらに縮小に向かうとみられ、マネタリーベースの増加ペースも緩やかに鈍化していくと考えられる。
今後も、引き続き日銀の国債買入れによって市中に残存する国債残高が減少に向かうため、日銀の国債買入れペースはさらに縮小に向かうとみられ、マネタリーベースの増加ペースも緩やかに鈍化していくと考えられる。
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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