2017年12月01日

消費者物価(全国17年10月)-コアCPI上昇率は当面ゼロ%台後半で推移

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は0.1ポイント拡大

総務省が12月1日に公表した消費者物価指数によると、17年10月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.8%(9月:同0.7%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:0.8%、当社予想も0.8%)通りの結果であった。
消費者物価指数の推移 生鮮食品及びエネルギーを除く総合は前年比0.2%(9月:同0.2%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。一方、総合は前年比0.2%(9月:同0.7%)と上昇率が前月から大きく縮小したが、これは生鮮食品が前年比▲12.1%の大幅下落となったためである。生鮮食品は、天候不順による生鮮野菜の価格高騰を主因として昨年10~12月に前年比で二桁の高い伸びとなっており、今年はその裏が出る形で下落幅が大きくなりやすい。総合指数の伸びがコアCPIの伸びを大きく下回る状態はしばらく続くだろう。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 コアCPIの内訳をみると、電気代(9月:前年比7.9%→10月:同7.9%)の上昇幅は変わらなかったが、ガス代(9月:前年比4.6%→10月:同5.2%)、ガソリン(9月:前年比7.1%→10月:同9.9%)、灯油(9月:前年比21.1%→10月:同24.5%)の上昇幅が拡大したため、エネルギー価格の上昇率は9月の前年比7.6%から同8.6%へと拡大した。

また、下落が続いていた耐久消費財が前年比0.0%(9月:同▲0.6%)となり、1年4ヵ月ぶりにマイナスを脱した。近年、耐久消費財は輸入浸透度の上昇を背景に為替変動の影響を受けやすくなっている。先行きは円安による輸入物価上昇の影響を受けて徐々に上昇率が高まる可能性が高い。

CPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.62%(9月:0.54%)、食料(生鮮食品を除く)が0.23%(9月:0.23%)、その他が▲0.05%(9月:▲0.07%)であった。

2.物価上昇品目数が増加

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、10月の上昇品目数は294品目(9月は276品目)、下落品目数は171品目(9月は185品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は56.2%(9月は52.8%)、下落品目数の割合は32.7%(9月は35.4%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は23.5%(9月は17.4%)であった。

現時点では、上昇品目数の割合はコアCPIが下落していた16年中よりも低い。ただし、円安による輸入物価上昇の影響は幅広い品目に及ぶため、先行きは上昇品目数の割合が高まっていく可能性が高い。

3.コアCPI上昇率は当面ゼロ%台後半で推移する見込み

17年11月の東京都区部のコアCPIは前年比0.6%(10月:同0.6%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:0.6%、当社予想も0.6%)通りの結果であった。
消費者物価指数(生鮮食品除く、東京都区部)の要因分解 ガソリン(10月:前年比10.8%→11月:同11.6%)、灯油(10月:前年比15.9%→11月:同16.4%)の上昇幅は拡大したが、電気代(10月:前年比9.6%→11月:同8.8%)、ガス代(10月:前年比9.7%→11月:同8.7%)の上昇幅が縮小したため、エネルギー価格の上昇率が10月の前年比9.8%から同9.2%へと若干縮小した。

一方、教養娯楽(10月:前年比▲0.1%→11月:同0.5%)、諸雑費(10月:前年比▲0.5%→11月:同0.4%)が上昇に転じたことがコアCPIを押し上げた。

東京都区部のコアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が0.44%(10月:0.47%)、食料(生鮮食品を除く)が0.17%(10月:0.17%)、その他が▲0.02%(10月:▲0.04%)であった。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 原油価格の上昇を受けて、ガソリン、灯油の店頭価格は大きく上昇しているが、前年の水準が高かったため前年比上昇率は今後縮小に向かうことが見込まれる。また、電気代、ガス代は原油価格の動きが遅れて反映されるため、上昇基調が明確となるのはさらに先となる。エネルギーによるコアCPI上昇率の押し上げ寄与は17年10月の0.6%程度から17年度末にかけて0.4%程度まで縮小することが予想される。

コアCPI上昇率は、需給バランスの改善や円安に伴う輸入物価上昇による上昇圧力を、エネルギー価格の上昇率鈍化が相殺する形で、当面ゼロ%台後半の推移が続く可能性が高いだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2017年12月01日「経済・金融フラッシュ」)

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