2017年11月29日

教育無償化について考える(2)-0~2歳児は待機児童解消が最優先、供給側と需要側の認識ギャップを解消し「隠れ待機児童」の把握を

生活研究部 主任研究員   久我 尚子

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■要旨
 
  • 本稿では0~2歳児の教育無償化について考える。報道によれば、政府試算では、0~2歳児の無償化は、世帯年収260万円未満(住民税非課税世帯)に限定すると年間約100億円 、全体では約4,400億円必要であり、現在、低所得世帯のみ対象として検討されている。
     
  • 0~2歳児の保育園利用率は上昇傾向にあり、2017年では1・2歳児が45.7%、0歳児が14.7%である。なお、0~2歳児は待機児童の86.7%を占める。政府の待機児童解消計画では、1・2歳児を中心に2022年度までに合計32万人分の保育の受け皿を整備する。現在、2020年度末に前倒しになるよう検討が進められている。
     
  • 一方で民間推計によると、政府の女性の就業率目標から必要な保育量を逆算すると、政府計画の約4倍必要だ。両者の違いは、政府は政府の定義に基づく保育需要から試算している一方、民間推計では女性の就業率を基に、必要となる全ての保育量を推計しているため、「隠れ待機児童」が含まれるためだろう。
     
  • 「隠れ待機児童」とは認可保育所に入れないにも関わらず、待機児童と認識されていない児童のことだ。例えば、自治体が補助する他の保育サービスを利用しているケース等が含まる。約5万人存在し、いわゆる待機児童数の2倍だ。供給側と需要側の認識ギャップを解消せずに、現状の数字を積み上げただけの計画では待機児童の解消は難しい。
     
  • 現在の認可保育所の利用者負担額を基に0~2歳の無償化コストを試算すると、上限額で保育標準時間の場合、年間約8,400億円となる。実際の利用者負担額は自治体により決定され、例えば、上限額の半分程度であれば政府試算と同等になる。
     
  • 今後のコスト試算については注意が必要だ。0~2歳児の保育需要は、待機児童の解消や男性の育児休業取得、復職後の環境整備等が進むことで変わる可能性がある。現在、低年齢児の保育園利用率が上昇している背景には、待機児童問題への懸念やブランクがキャリア形成へ不利になることへの懸念から、育児休業を早めに切り上げる女性も多いこともある。
     
  • 現状把握をより丁寧に行うことで、保育に対する供給側と需要側の認識ギャップを無くし待機児童の解消を進めること、そして、時間でなく生産性が評価されるような仕組み作りを進め、子を生み育てながら安心して働けるような環境を整備すべきだ。

■目次

1――はじめに~0-2歳児は低所得世帯のみ無償化の方針、年間予算約100億円
2――0~2歳児の保育園利用状況
 ~待機児童の約9割が低年齢児、「隠れ待機児童」で解消困難か
  1|保育園利用と待機児童の状況
   ~低年齢児の保育園利用率は15年で2倍超、待機児童の約9割
  2|政府の待機児童解消計画
   ~1・2歳児を中心に32万人分の受け皿増で2020年度までには解消予定
  3|政府計画と民間推計の乖離
   ~女性の就業率目標から逆算すると約4倍の保育の受け皿が必要
  4|「隠れ待機児童」の存在
   ~「隠れ待機児童」を加えると待機児童は2倍、供給側と需要側の認識ギャップ
3――0~2歳児の教育無償化にかかるコスト
  1|0~2歳児の保育費
   ~現在の認可保育所等利用者負担上限額・保育標準時間で年間約8,600億円
  2|0~2歳児の今後の保育ニーズ
   ~必要以上に膨らんでいる可能性も、まずは待機児童解消を
4――おわりに~待機児童の解消を優先すべき、供給側と需要側の認識ギャップが課題
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生活研究部   主任研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング

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