コラム
2017年11月28日

「教育の無償化」を考える-「自助」と「公助」のバランス

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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11月17日、安倍首相は国会の施政方針演説において「人生100年時代」の社会経済を構想するため「教育の無償化」を表明した。先の総選挙において「人づくり革命」の主要施策として公約に掲げていたものだ。3歳から5歳のすべての子どもの幼稚園と保育所の費用は認可外保育所も含めて無償化し、2歳児までは低所得世帯に限る。高等教育については、どんな貧しい家庭に育っても意欲さえあれば進学できるように、真に高等教育を必要とする子どもたちには無償化を進めるという。

これに対し、社会保障財源が逼迫する中で、所得に制限のない3歳から5歳の幼児教育の無償化は富裕層に有利になり、一層格差を広げることにつながるとの批判や、無償化の前に十分な保育所整備を優先すべきではないかという声も聞こえる。一時は認可外保育所を対象からはずす案も浮上したが、今後は無償化の対象とする世帯の補助額の上限を設定する案や私立高校の授業料補助などについても国会で活発な論戦が展開されるだろう。

教育による「人づくり」は、道路と同様に国家のインフラづくりだ。幼児教育は一般道路、高等教育は高速道路に例えられないだろうか。一般道路はだれもが無料で利用できる如く、幼児教育は世帯の収入に関わらず無償で提供されるべきであり、大学などの高等教育は高速道路の如く、利用者が等しく費用負担することが原則ではないか。その上で苦しい経済状況にありつつも高等教育を目指す優秀で意欲を持った学生には、学費の免除をはじめ返済不要の給付型奨学金を手厚く支給すべきだ。

社会保障制度は、北欧諸国の「高福祉・高負担」型や米国の「低福祉・低負担」型のように国の佇まいを表す。日本が「自助」を基本とし、「公助」というセーフティネットの上に、重層的な「共助」による支え合いを指向するなら、幼児教育はすべての子どもが公平な人生のスタートラインに立つための重要なインフラとして、財源の状況や世帯所得の多寡に関わらず「公助」により保証されるべきものだろう。一方、大学などの高等教育は個人の選択によるもので、「自助」を原則とすべきだ。

「人生100年時代」を乗り切るための「人づくり革命」には、大学進学以外の多様な選択肢や成人人生の学び直しの機会「リカレント教育」など、「就労」と「就学」の間の自由な行き来が必要だ。イギリスの「ギャップ・イヤー」のような大学進学までの猶予期間や、デンマークの「フォルケ・ホイスコーレ」*のような成人教育の場などである。限りある財源の中で少子高齢化が進み、日本社会が今後どのような「自助」と「公助」のバランスを図るのか、日本の将来像と針路が問われている。
 
 
* デンマーク国内に約70校ある全寮制の成人向け教育機関で、原則として入学試験、成績評価、卒業資格等はない。
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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2017年11月28日「研究員の眼」)

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