2017年11月10日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(11月号)~輸出は新型スマホ発売の影響で好調続く

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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ベトナムの17年9月の輸出額は前年同月比25.9%増と、前月の同22.8%増から上昇し、8ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出の伸び率は昨年後半に主力の電気・電子製品が勢いを取り戻して以降、政府目標(17年は+6~7%)を上回る伸びが続いている。一方、輸入額も前年同月比24.8%増(前月:同16.9%増)と上昇した結果、貿易収支は11.0億ドルの黒字となり、前月から4.8億ドル減少した(図表9)。

輸出を品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同66.6%増(前月:同39.5%増)と一段と上昇し、6カ月連続の二桁増となった(図表10)。電話・部品の好調は年後半のモバイル新型スマートフォン発売の影響であり、当面は高水準を維持するものと見込まれる。またコンピュータ・電子部品も同33.1%増(前月:同34.4%増)と上昇し、16カ月連続の二桁増となった。アパレル関連では織物・衣類が同10.7%増(前月:同9.3%増)、履物が同18.8%増(前月:同15.5%増)と、それぞれ高い伸びを維持している。農産品ではコーヒー(同26.7%減)とコショウ(同29.2%減)が落ち込む一方、ゴム(同26.4%増)やカシューナッツ(同21.7%増)、野菜(同14.0%増)などが好調に推移している。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同28.6%増(前月:同24.5%増)、地場企業が同19.2%増(前月:同18.7%増)と、それぞれ上昇した。
(図表9)ベトナムの貿易収支/(図表10)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
シンガポールの17年9月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比0.3%減(前月:同15.6%増)と低下した。これまで輸出は医薬品の不振が続くなかでも主力の電子製品と石油化学製品が好調で増加傾向を維持してきたが、9月は電子製品が大きく鈍化して4ヵ月ぶりのマイナスに転じた。この電子製品の落ち込みは一次的なものとみられるが、注意して見ておく必要はあるだろう。なお、総輸出額は前年同月比4.5%増(前月:同14.0%増)、総輸入額も同9.9%増(前月:同14.7%増)と、それぞれ低下した結果、貿易収支は40.4億ドルの黒字と、前月から1.0億ドル黒字が縮小した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同7.3%減と、前月の同19.6%増から大幅に低下した(図表12)。電子製品の内訳を見ると、前月に二桁増を記録したIC(同3.4%減)とPC(同17.0%減)、PC部品(同0.1%増)がそれぞれ大幅に低下したほか、通信機器(同1.8%減)とダイオード・トランジスタ(同17.5%減)も低迷した。また電子製品と同じく全体の約3割を占める化学製品も同2.7%増と、前月の同14.8%増から大きく低下した。化学製品の内訳を見ると、石油化学製品が同12.4%増(前月:同30.6%増)と高水準を維持する一方、医薬品が同35.6%減(前月:同10.0%減)と一段と低下した。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの17年9月の輸出額は前年同月比4.3%増と、前月の同9.6%増から低下した。輸出は海外経済の回復を受けて電子製品を中心に概ね二桁増で推移してきたが、足元ではベース効果が剥落して輸出の勢いは弱まりつつある。一方、輸入額も前年同月比1.7%増(前月:同10.4%増)と低下した。結果、貿易収支は19.1億ドルの赤字と、前月から4.8億ドル赤字が縮小した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同6.6%増と、前月の同3.3%増から上昇した(図表14)。電子製品の内訳を見ると、遠距離通信機器(同42.1%減)が大きく落ち込んだほか、電子データ処理機(同2.3%増)も伸び悩む一方、主力の半導体デバイス(同8.4%増)は堅調に拡大、計測制御機器(同14.3%増)も急上昇した。

その他9品目については金(同171.3%増)やココナッツオイル(同63.8%増)、機械・輸送用機器(同34.9%増)、金属部品(同8.2%増)、その他製造品(同6.9%増)、電子機械・部品(6.6%増)が増加した一方、化学(同28.6%減)、その他鉱業品(同25.2%減)、イグニッション・ワイヤーセット(同17.4%減)が減少するなど、総じて増加した品目が多かった。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2017年11月10日「経済・金融フラッシュ」)

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