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日銀の金融緩和政策が及ぼす影響-イールドカーブ・コントロールは金利変動パターンを変えたか
水野 友理那
1――複雑に変化するイールドカーブと金利の連動性
2―― YCC導入後、金利の連動性に変化はあったのだろうか
本稿では、類似性が高いものをグループ化する手法であるクラスタリング分析1を用い、連動性の高さに応じて分類する。具体的には、マイナス金利導入1年前から直近までを以下の3期間に分け、期間ごとに分析し比較を行う。
(A)マイナス金利導入前(平成27年3月~平成27年12月2)
(B)マイナス金利導入後YCC導入前(平成28年2月~平成28年8月)
(C)YCC導入後(平成28年10月~平成29年8月)
使用データには、NOMURA-BPI(国債)年限別3インデックスの平均複利の月次変化幅を用いた。ただし、月次変化幅を各期間の標準偏差で除した4。これは、マイナス金利導入直後の金利変化が激しかった時期は他の時期と比べて変化幅のばらつきが極めて大きく、分類結果をそのまま比較することが難しいためである。今回は分類結果と全年限の連動性の2軸で評価する。前者は、連動性の高い年限区分を示し、同区分内にある年限の金利は、ある程度のまとまりを持って変化する。後者は全年限総じて同一方向に変化する(イールドカーブがパラレルシフトする)傾向の強さを表す。
1 考察にあたっては、グループ間平均連結法とWard法の結果を勘案し、同様の傾向が見られた。文中の表記はWard法に基づく。Ward法は、群内の点同士の距離が最小となるような年限の組み合わせから階層的に結合していく手法。グループ間平均連結法は、群に含まれる全ての点同士の距離の平均が最小となるように階層的に結合していく手法。今回は、年限同士の距離が基準となる。
2 29-30年が欠損のため平成27年1・2月は除いた。
3 ただし、30-32年国債は欠損があるため除外。
4 正規化しなかったのは、クラスタリング分析の特性上、平均値を引くことは結果に影響を与えないため、今回は割愛した。
5 分類にあたっては、結合による情報ロスが全体の10%未満になるところまでとした。
3―― YCCによる影響はあったのだろうか
方法としては、マイナス金利導入直前直後、YCC導入直前直後、それぞれ1か月分を対象に分析を行う。先ほどと異なるのは、日次変化幅を用いた点であり、基本的な手法は同じである。
(a) マイナス金利導入前の1ヶ月(平成27年12月)
(b-ア)マイナス金利導入後の1ヶ月(平成28年2月)
(b-イ)YCC導入前の1ヶ月(平成28年8月)
(c) YCC導入後の1ヶ月(平成28年10月)
結果は、図表4、5を参照いただきたい。10年以下に注目すると、マイナス金利導入直後に区分は拡大したが、その後、時間を追うごとに縮小する様子が見て取れる。また、全年限の連動性に関しては、マイナス金利導入後には高くなる一方、YCC導入前後では大きく変化していないことがわかる。この結果から、政策の影響はそれほど大きくないとするのが妥当ではないだろうか。
水野 友理那
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(2017年11月09日「基礎研レター」)
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