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- 最近の人民元と今後の展開(2017年11月号)~共産党大会を終えたあとの人民元レートの行方
1――10月の人民元の動き
他方、世界の外為市場の動きを見ると、10月は9月の米ドル高の流れを引き継いでほぼ米ドル全面高の展開だった。米連邦準備理事会(FRB)が12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げに踏み切る可能性が高いとの見方が背景にある。主要通貨ではユーロが前月末比1.5%下落、日本円も同0.9%下落した。他方、新興国通貨ではブラジル(レアル)やロシア(ルーブル)は反落したものの、アジア通貨は概ね堅調で、韓国(ウォン)は同2.2%上昇、インド(ルピー)は同0.8%上昇、タイ(バーツ)も同0.4%上昇した(図表-2)。なお、10月は人民元が米ドルに対して小幅に上昇する一方、日本円は下落したため、日本円に対する人民元レートは100日本円=5.85275元(1元=17.09円)と前月末比1.0%の元高・円安となった(図表-3)。
2――今後の展開
米中の経済金融動向を考えると、中国政府(含む中国人民銀行)は16年秋以降、住宅バブル退治に乗り出したため、景気指標の一部には陰りが見え始めた。しかし、17年1-9月期の実質成長率が17年目標(6.5%前後)を大幅に上回るなど、景気の勢いは想定以上に強く、住宅バブル膨張も続いているため、17年内にも基準金利を引き上げる可能性があると見ている。他方、米国では景気拡大が持続しており、12月にも追加利上げがあると見られる。そして、米国国債(10年)金利はここもとじわじわと上昇してきている。しかし、景気が底打ちした中国国債(10年)金利も3.9%前後まで上昇しており、米中の長期金利差は縮まっていない(図表-4)。従って、その前提を覆すような大きな波乱材料がでてこない限り、米ドルに対する人民元レートはボックス圏でほぼ横ばいの値動きが続くと予想している。
但し、18年以降を視野に入れると人民元が急伸する可能性は排除しきれない。ここもとユーロドルの上昇には歯止めが掛かったものの、ユーロと人民元の間に生じた乖離は依然として高水準にあるからだ(図表-6)。中国人民銀行は16年2月以降、「人民元ショック」で市場を混乱させたことを教訓に、人民元レートをバスケット通貨を参照して調整するようになった。そして、その後は米ドルに次いで比重の高いユーロとの連動性を高め、過去1年で計測した人民元とユーロの対ドルレートの相関係数は0.9前後で推移している(図表-7)。しかし、その連動率は3分の1程度に留まったため、ユーロが急上昇した局面ではユーロと人民元に大きな乖離が発生、ユーロに対する基準値は1ユーロ=8元近辺まで急落することとなった。その後のユーロドル下落に伴ってユーロ元は若干調整したものの、ユーロ元の下値は堅く同7.7元前後で推移している。また、2017年8月号でも指摘したとおり、現在の人民元を取り巻く環境は15年8月に「人民元ショック」が起きた時と似た面がある。「人民元ショック」前の人民元は米ドルに対して長らく横ばいで推移していたが、ユーロが14年に急落したため、ユーロと人民元の乖離が拡大、ユーロに対する人民元の割高感が高まった。そうして生じた両者の大きな乖離を、一部調整しようとして起きたのが15年8月の「人民元ショック」だった。従って、ユーロドルが再び高値にチャレンジする展開ともなれば、人民元レートも上限(1米ドル=6.55元)を試すことになるだろう。ユーロドルの動きには引き続き注意が必要である。
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三尾 幸吉郎
研究・専門分野
(2017年11月02日「基礎研レター」)
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