2017年11月01日

ロボット介護機器の「重点分野」が改訂され6分野13項目に-コミュニケーションロボットや排泄予測機器など1分野5項目を追加-

青山 正治

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■要旨

10月12日に厚生労働省と経済産業省より「ロボット技術の介護利用における重点分野」の第2回目の改訂内容が同時公表された。この「重点分野」の初めての策定は2012年11月22日に「4分野5項目」で発表され、初回の改訂は2014年2月3日に1分野3項目が追加され合計で「5分野8項目」となった。2013年度より経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」における公募による開発補助(助成)事業が実施されてきた。また、2013年度には経済産業省と厚生労働省の事業を含めて、国の成長戦略に「ロボット介護機器開発5カ年計画」として組込まれ現在に至っている。その間、「移乗支援」や「移動支援」、「見守り」等々の分野で開発支援された機器群が既に複数、実用化され登場している。第2回目の今回の改訂では、成長戦略「未来投資戦略2017」において介護や介護ロボット開発について「自立支援等による利用者の生活の質の維持・向上」と「介護者の負担軽減」の両方を同時に「実現」する方針が打ち出されている。2017年度は前述の「5カ年計画」の最終年度に当たり、今回の「重点分野」の改訂は「未来投資戦略2017」の方針を踏まえた次期計画策定に向けた取組の一つであり、追加された1分野5項目の内容は開発の優先度が高い。また、10月13日には、国立研究開発法人日本医療研究開発法人(AMED)より最長研究期間1年とする「平成29年度 ロボット介護機器開発・導入促進事業(開発補助事業)」(2015年度より経済産業省がAMEDに委託)の公募が公表された。内容は、追加の1分野5項目のフィージビリティスタディ・試作開発及び既存5分野8項目の改良開発の2テーマである。

「重点分野」の策定・改訂の意義
ロボット介護機器(介護ロボット)の「重点分野」の策定・改訂は、国が継続的に行なっていかなくてはならないテーマであると筆者は思っている。介護ロボットは様々な対象者に対して、人と介護ロボットが協働しつつ最適な役割分担で質の高い介護サービスの提供を目指す機器であり、予想以上に数多くの安全性確保や機能、使い易さに配慮した開発が求められる機器である。と同時に、超高齢社会において生じる様々な介護の社会的課題の改善や解決を目指すものである。したがって単に介助支援を目指す特定の機器開発に止まらず、介護分野で幅広く多種多様の支援機器開発を戦略的に推進していく必要性が高い。また、高齢化が進行する海外諸国においても、社会保障費の最適化や企業の新規事業分野の創出を目指し、日本の開発動向を注視する国は少なくない。この点においても迅速で効果的な開発を推進する上で「重点分野」による開発分野の特定と分野の拡大による各種機器の開発推進は重要な意義があると考える。また、中長期的にわたる継続的な開発における技術革新の進展にも期待したい。

今後の両省によるロボット介護機器(介護ロボット)の社会実装に向けた各種の事業成果に注目したい。

■目次

1――日本の介護ロボット開発を先導する「ロボット技術の介護利用における重点分野」
  1|今回の改訂で1分野5項目が追加され合計6分野13項目に
  2|追加された1分野5項目について
2――「重点分野」の策定・改訂の意義と今後
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青山 正治

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