2017年10月27日

税制改革実現に一歩前進-財政調整指示を盛り込んだ予算決議が可決。税制改革実現に一歩前進も、紆余曲折を予想

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. 10月より新会計年度がスタートしたが、現在は12月8日を期限とする暫定予算で凌ぐ状況が続いている。10月26日に予算の大枠を決める予算決議が漸く上下両院で可決されたことから、今後は歳出法案審議の加速が見込まれる。
     
  2. 予算決議ではトランプ政権が目指す税制改革を共和党のみで実現するため、10年間で1.5兆ドルの減税を可能とする財政調整指示が盛り込まれた。
     
  3. 一方、9月下旬にトランプ政権が発表した税制改革の統一枠組みでは、個人や法人向けの税率引き下げや税の簡素化などの方針が示された。また、今回提示された改革案では法人税制で物議を醸していた、仕向地主義のキャッシュフロー課税や国境調整税などの導入は見送られた。もっとも、統一枠組みでは概要が提示されただけで、共和党内でも意見が分かれている制度設計については議会に丸投げされた格好となっている。
     
  4. 現在、下院共和党を中心に11月早々に税制改革の草案を提示できるように作業が進められている。しかしながら、富裕層への減税を回避し、歳入中立を達成できる制度設計を実現するのは様々な利害関係者の調整も含めて困難が予想される。
     
  5. これから、議会を中心に18年度予算案と並行して税制改革案の審議が本格化するが、トランプ政権が目指す年内の税制改革案の成立は困難だろう。また、来年以降についても、税制改革実現のためには、減税規模の縮小は不可避とみられる。
(図表1)財政収支および債務残高(名目GDP比)
■目次

1.はじめに
2.予算編成の動向
  ・(17年度予算実績)16年度から財政赤字は拡大したものの、債務残高(GDP比)は低下
  ・(18年度暫定予算)災害対策費用153億ドルを17年度予算分として計上
  ・(18年度予算決議)税制改革実現にむけて一歩前進
3.税制改革の動向
  ・(統一枠組みの概要:個人向け):所得税率区分を集約、基礎控除を倍増
  ・(統一枠組みの概要:法人向け)法人所得税や、パートナーシップに対する
    最高税率を引き下げ
  ・(所得階層別減税効果)所得階層上位1%に減税分の8割が集中
4.今後の見通し
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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