2017年10月27日

中国経済:17年のこれまでを総括した上で18年の注目ポイントを探る

三尾 幸吉郎

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1.GDP統計

(図表-1)中国の実質成長率と消費者物価 中国国家統計局が10月19日に公表した2017年1-9月期の国内総生産(GDP)は59兆3288億元(日本円換算では約1000兆円)となった。実質成長率は前年比6.9%増と16年通期の同6.7%増を0.2ポイント上回っている。これまで2011年以降6年連続で前年の伸びを下回る状況となっていたが、17年末までこの成長率が維持できるようだと、7年ぶりに前年の伸びを上回ることになる(図表-1)。
(図表-2)中国の実質成長率(産業別) 経済構造の変化も静かに進んでいる。

産業別に見ると、第1次産業の実質成長率は前年比3.7%増と16年通期の同3.3%増を0.4ポイント上回った。しかし、数年前まで4%台だった成長率はその後3%台へ低下しており、トレンドとしては緩やかな減速傾向にある。第2次産業の実質成長率は同6.3%増と16年通期の同6.1%増を0.2ポイント上回った。2010年の同12.7%増をピークに6年連続で前年の伸びを下回るなどここもとの景気減速の主因となっていたが、17年1-9月期には若干ながらも持ち直した。また、第3次産業の実質成長率は同7.8%増と16年通期の同7.8%増と同じ伸び率で横ばいだった。この伸び率を保ったまま17年末を迎えれば、第3次産業の成長率が5年連続で第2次産業を上回ることになり、中国経済の牽引役は第3次産業へ移行しつつある(図表-2)。
(図表-3)中国の実質成長率(需要別) 一方、需要別に見ると、純輸出は0.2ポイントのプラス寄与と16年通期の▲0.5ポイントからプラスに転じた。リーマンショック後には3年連続で大幅マイナス寄与したが、その後は0.5ポイント以下の小幅な寄与に留まっている。総資本形成は2.3ポイントのプラス寄与と16年通期の2.8ポイントを下回った。2009年の8.1ポイントをピークに低下傾向が続いている。最終消費は4.5ポイントのプラス寄与と16年通期の4.3ポイントをやや上回った。最終消費は安定的にプラス寄与する傾向が続いている(図表-3)。
 

2.供給面

2.供給面

工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)の動きを見ると、17年1-9月期は前年比6.7%増と16年通期の同6.0%増を0.7ポイント上回った。2011年以降、工業生産は6年連続で前年の伸びを下回ってきたが、その鈍化傾向に歯止めが掛かってきた(図表-4)。また、業種別の内訳を見てみると、鉱業は前年比1.6%減、鉄精錬加工は同0.6%増と全体の伸びを押し下げる要因となった一方、コンピュータ・通信・その他電子設備は同13.9%増、自動車は同13.2%増と全体の伸びを押し上げる要因となった(図表-5)。過剰生産設備を抱える石炭や鉄鋼などが引き続き足かせとなってはいるものの、情報通信や自動車が新たな牽引役として浮上、今後の動向が注目される。
(図表-4)工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)の推移/(図表-5)工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上、2017年1-9月期)
また、製造業PMIの動きを見ると、16年上期までは拡張・収縮の境界となる50%を挟んだ動きで下振れ懸念が燻っていたが、16年10月以降は51%台へ水準を切り上げ、17年9月にはおよそ5年ぶりとなる52%台に乗せるなど、製造業は少しずつ改善してきた(図表-6)。一方、非製造業PMI(商務活動指数)を見ると、ここもとやや振れが大きいものの、概ね53-55%の高水準で推移、同予想指数も60%台の高水準にあることから、非製造業は堅調と言って良いだろう(図表-7)。
(図表-6)製造業PMI/(図表-7)非製造業PMI

3.需要面

3.需要面

(図表-8)小売売上高の推移 消費の代表指標である小売売上高の動きを見ると、17年1-9月期は前年比10.4%増と16年通期の同10.4%増から横ばいで推移している。電子商取引(EC)が同34.2%増と高い伸びを維持して消費を刺激したほか、飲食は同8.1%増と16年通期の同6.0%増を2.1ポイント上回り、衣類は0.2ポイント、化粧品は3.8ポイント、家電類1.4ポイント、家具類は0.6ポイントそれぞれ上回った。しかし、小型車減税の縮小で自動車が前年比6.2%増と16年通期の同10.1%増を大きく下回ったため、全体の伸びは横ばいに留まった(図表-8)。
(図表-9)固定資産投資(除く農家の投資)の推移 投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)の動きを見ると、17年1-9月期は前年比7.5%増と16年通期の同8.1%増を0.6ポイント下回った(図表-9)。内訳を見ると、インフラ投資は前年比19.8%増と極めて高い伸びを示し16年通期の同17.4%増を2.4ポイント上回った。また、15年には住宅市場が崩れたことで前年比1.0%増と落ち込んだ不動産開発投資も16年には同6.9%増、17年1-9月期も同8.1%増と緩やかに回復してきた。しかし、採掘業の不振が足かせとなった第2次産業は前年比2.6%増と16年通期の同3.5%増を0.9ポイント下回ったため、全体の伸びをやや低下させることとなった。
(図表-10)輸出額(ドルベース)の推移 海外需要の代表指標である輸出額(ドルベース)の動きを見ると、17年1-9月期は前年比7.5%増と15年通期の同2.9%減、16年通期の同7.7%減からプラスに転じた(図表-10)。景気回復が続く米国、欧州EU、日本など先進国向けの輸出が好調だったほか、その恩恵を受けるASEAN向けも好調に推移した。また、輸出の先行指標となる新規輸出受注(製造業PMI)や貿易輸出先行指数が高水準を維持していることから、輸出は今後もしばらくは堅調で、大きく落ち込む可能性は低いと思われる。
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三尾 幸吉郎

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