2017年10月23日

活況が続く大阪のオフィス市場-大規模ビルを中心に好調は梅田地区以外へ波及

竹内 一雅

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4. 大阪の新規供給・人口見通し

大阪では2016年に新規の賃貸オフィスの供給が全くなかった。今年は中之島フェスティバルタワー・ウェストが供給されたが、今後も大規模賃貸ビルの供給計画は多くなく、2018年に新南海会館ビル、2020年にオービック御堂筋ビル、2022年に大阪神ビルディング・新阪急ビル建替計画(梅田1丁目1番地計画)が予定されている程度である8(図表-11)。

住民基本台帳人口移動報告によると、大阪市では2001年に人口が転入超過に転じて以来、人口の純流入は増加傾向が続いている(図表-12)。人口の転入超過数の増大に伴い、国勢調査ベースでも人口は増加を達成してきた。2010年~15年は、国立社会保障・人口問題研究所が大阪市人口の2千人の微減を予測していたが、実際には2.6万人の増加であった(図表-13)。今後は人口の減少が見込まれているが、減少幅は緩和されると見込まれる9

最近の大阪市の人口増加を支えているのは、市外からの純流入と外国人の増加である。大阪市の人口は2016年に9,870人増加したが、その49.6%に当る4,899人が外国人だった(図表-14)。大阪市でも今後、日本人人口が減少する中で、外国人人口の増加が顕著になってくる可能性が高い。
図表-11 大阪のオフィスビル新規供給見通し/図表-12 主要都市の転入超過数
図表-13 大阪市の年齢3区分別人口の現況と見通し/図表-14 大阪市の日本人・外国人人口(2016年)
 
8 完成予定は未定だが、うめきた2期地区再開発や、梅田3丁目計画(大阪中央郵便局跡地開発)などでもオフィスが供給される見込みである。
9 国立社会保障・人口問題研究所では、現時点では市区町村別の人口予測は2010年国勢調査基準の見通ししか公表していないが、全国の総人口に関しては2015年国勢調査基準の見通しを公表しており、2010年基準より人口の減少率が緩和されている。大阪市についても今後の人口減は緩和するという予測が公表されると考えられる。
 

5. 大阪のオフィス賃料見通し

5. 大阪のオフィス賃料見通し

大阪における今後のオフィス供給や人口流入、経済予測10などに基づくオフィス需給の見通しから、2023年までの大阪のオフィス賃料を予測した。

大阪ではオフィス需要の強さと、新規供給の少なさが継続すると考えられるため、需給の逼迫が続き、当面、オフィス賃料は上昇すると予測される(図表-15)。標準シナリオによると、オフィス賃料は、2017年(上期、以下同じ)から当面のピークである2021年にかけて+15.1%上昇(2017年上期比)するという結果が得られた。

賃料のピークまでの上昇率は、楽観シナリオで+24.4%(2017年上期比、ピークは2021年)、悲観シナリオで+5.0%(同、ピークは2020年)となる。
図表-15 大阪オフィス賃料見通し
 
10 ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2017~2027年度)」2017.10.13。
 

6. おわりに

6. おわりに

大阪のオフィス市況は、堅調な需要と新規供給の少なさにより、空室率の低下と新規成約賃料の上昇が続いている。都心に立地する築浅の大規模ビルでは満室のビルも多くなっている。その一方で、中小オフィスビルのオーナーの中には、空室率は低下傾向にあるが、賃料は横ばいで景況感の上昇を実感できないという方も多いと聞く。すでに募集賃料が梅田地区以外でも底打ちをはじめたように、御堂筋を中心に他地区の中小ビルにおいても景況感の改善は顕在化してくるだろう。景気の回復から今後も館内増床や拡張移転が期待でき、人手不足対策や自社ビルの老朽化などによるテナントの市内中心部への移転も当面続くと考えられるからだ。とはいえ、大阪でもオフィス機能は中心部への集約が進む傾向がみられるため、ビジネス地区の周縁エリアへの波及には時間がかかる可能性が高い。また、中期的には国内人口の減少によるオフィス需要の減少が懸念されているため、将来的な競争激化に備え、テナントからの要望の高い改修などを通じたビル競争力のさらなる向上と収益アップに努めることが重要だろう11
 
11 2018年は3年に一度の固定資産税の評価替えの年である。大阪市内中心部では最近のホテル投資の活況から地価が急上昇しており、オフィスビルでも固定資産税額の上昇は不可避と考えられる。成約賃料に加え継続賃料の引き上げ努力は収益確保のためにも重要と考えられる。
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竹内 一雅

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