2017年10月20日

欧州通貨基金(EMF)構想と欧州預金保険スキーム(EDIS)

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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■要旨
  1. 欧州連合(EU)の改革の議論が本格化している。
     
  2. ユーロ制度改革は、EU改革の重要テーマの1つであり、今年5月の欧州委員会の考察文書には、2025年のユーロ制度の完成に向けた改革の工程表が提案されている。
     
  3. ユーロ制度の改革は、世界金融危機とそれに続く債務危機への対応に追われる形で進展し、ユーロ圏は、以前よりもショックにも強くなった。しかし、今後のECBの異次元緩和縮小に備えるためにも、ユーロ制度改革の加速が望まれる。
     
  4. 財政面では、ルールと監視に偏重し、単一通貨圏として最適な財政政策への調整や、圏内格差を是正するメカニズムを欠いた現状を改革する必要性では一致している。しかし、各論では見解が異なるため、現段階では具体的な方向が見極め難い。
     
  5. 銀行同盟は、すでにECBによる単一銀行監督メカニズム(SSM)と単一破綻処理メカニズム(SRM)という骨格が形成されている。残された課題は、欧州預金保険スキーム(EDIS)の始動と単一破綻処理基金(SRF)のバックアップである。10月には銀行セクターのリスク削減が不十分という理由から政治合意が遅れていたEDISについて、欧州委員会が新提案を行い、ユーログループで欧州安定メカニズム(ESM)の改革が議論された。ドイツが主張するESMの欧州通貨基金(EMF)への強化も具体化しつつある。12月の首脳会議に向けた議論の行方が注目される。
ユーロ圏財務省と欧州通貨基金(EMF)構想
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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴
  • ・ 1987年 日本興業銀行入行
    ・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
    ・ 2023年7月から現職

    ・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
    ・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
    ・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
    ・ 2017年度~ 日本EU学会理事
    ・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
    ・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
               「欧州政策パネル」メンバー
    ・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
    ・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
    ・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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