2017年10月16日

金融政策の超長期国債金利への影響について考える-金融政策による超長期国債金利の押し下げ効果の測定

金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹

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■要旨
 
  • 20年国債金利を「10年国債金利」と「20年国債金利と10年国債金利の差分(スプレッド)」に分解して、物価の安定目標の導入による時間軸効果も含めて、日本銀行による金融政策との関係について重回帰分析を行った。
     
  • 2017年9月末時点で、10年国債金利は金融政策により1.262%(包括緩和政策までの0.538%+量的・質的金融緩和政策以降の0.724%)押し下げられており、スプレッドは0.055%(包括緩和政策までの0.296%-量的・質的金融緩和政策以降の0.241%)押し上げられている。
    よって、20年国債金利の金融政策による押し下げ効果の大部分は、10年国債金利に対する押し下げ効果で説明できる。
     
  • イールドカーブ・コントロール(YCC)導入までは、物価の安定目標の導入による時間軸効果が10年国債金利を押し下げていた。
    YCC導入後は10年国債金利と物価の安定目標との連動性が失われた一方で、スプレッドと物価の安定目標が連動するようになり、スプレッドを押し下げている。
     
  • スプレッドに働いていたマイナス金利政策による押し下げ効果は、YCC導入後におおよそ回復している。
     
  • 金融政策による押し下げ効果が全て解消する場合は、超長期金利は10年国債金利が押し下げられている分だけパラレルシフトすることが予想される。
    しかし、実際には金融政策の解除の順序に違いが出て、物価の安定目標達成によって時間軸効果が解消された後に、その他の金融政策が解除されることが想定される。
    その場合、本稿の分析に基づくと、初めに物価の安定目標の導入による押し下げ効果が解消されることでスプレッドのみが拡大し、次に、その他の金融政策による押し下げ効果が解消されることで、10年国債金利がその押し下げ効果分を回復(金利上昇)し、それと同時にスプレッドは縮小すると考えられる。

■目次

1――はじめに
2――モデルの設定と推計結果
  1|日本国債金利(10年物)に関する重回帰モデル
  2|日本国債金利(20年物)と日本国債金利(10年物)のスプレッドに関する
   重回帰モデル
  3|YCCとオーバーシュート型コミットメントの導入がもたらしたもの
3――金融政策による押し下げ効果の測定
  1|日本国債金利(10年物)の押し下げ効果
  2|日本国債金利(20年物)と日本国債金利(10年物)のスプレッドの押し下げ効果
  3|金融政策による日本国債金利(20年物)の押し下げ効果
4――金融政策を解除したときに想定されるイールドカーブの動き
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金融研究部   金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任

福本 勇樹 (ふくもと ゆうき)

研究・専門分野
金融・決済・価格評価

経歴
  • 【職歴】
     2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
     2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
     2021年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
     ・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)

    【著書】
     成城大学経済研究所 研究報告No.88
     『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
      著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
      出版社:成城大学経済研究所
      発行年月:2020年02月

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