2017年10月13日

貸出・マネタリー統計(17年9月)~「貯蓄から投資へ」の動きは確認できず

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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3.マネーストック: 広義流動性の伸びが上昇

10月13日に発表された9月のマネーストック統計によると、市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比4.1%(前月は4.0%)と前月からやや上昇、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同3.4%(前月も3.4%)と横ばいになった(図表9)。それぞれ、比較的高い伸びを維持しており、高水準の経常収支黒字や貸出増加が引き続き寄与しているとみられる。
(図表9) M2、M3、広義流動性の伸び率/(図表10) 現金・預金の伸び率
M3の内訳では、普通預金などの預金通貨の伸び率が前年比8.0%(前月は7.9%)とやや上昇した一方(図表10)、CDのマイナス幅が拡大した(前月▲0.3%→当月▲0.7%)。現金通貨(4.7%)、準通貨(定期預金など、▲1.2%)の伸び率は前月と変わらなかった。
(図表11)投資信託・金銭の信託・準通貨の伸び率 また、M3に投信や外債といったリスク性資産等を含めた広義流動性の伸び率は前年比3.8%(前月は3.7%)と上昇し、2015年9月以来の高い伸びとなった(図表9)。伸び率の拡大は11ヶ月連続となる。

内訳では、残高規模の大きい金銭の信託(前月改定値6.3%→当月7.1%)が引き続きプラス幅を拡大し、従来同様、広義流動性の伸びを牽引している(図表11)。また、外債(前月改定値12.1%→当月15.8%)の伸びも上昇した。一方、家計が大半を保有し、注目度の高い投資信託(元本ベース)の伸び(前月改定値▲0.1%→当月▲1.0%)はマイナス幅を拡大している。

投資信託の低迷については、金融庁の批判を受けて、かつての大ヒット商品であった毎月分配型投信が販売自粛されていることの影響もあるが、基本的には盛り上がりを欠く家計の投資マインドを反映したものと考えられる。実際、家計保有の預金通貨は高い伸び(8月時点で前年比7.4%)を維持しており、「貯蓄から投資へ」の動きは未だ確認できない。
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2017年10月13日「経済・金融フラッシュ」)

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