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家族に関わる女性の不安-多様化する女性のライフコースと不安、政策にも多様性の観点を
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
1――はじめに
ライフコース選択の自由度が増す一方で、依然として家事や育児、介護などの負担が妻に偏る家庭は多い。また、そもそも女性は子を生む性であるため、男性より家族形成に関わる不安を抱えがちだ。
本稿では、家族に関わる不安にはどのようなものがあるのか、そして、女性では、未既婚や子の有無、働き方によってどのような違いがあるのか、また、年齢とともにどう変わるのかを捉える。分析には、弊社実施の調査データ2を用いる。
1 50歳時点での未婚率。
2 日常生活における不安等に関する調査、調査対象は学生を除く20~69 歳の男女、インターネット調査、2014 /8実施、調査機関は株式会社マクロミル、有効回答4,131(男性2,051、女性2,080)。
2――家族形成における不安~全体では「死後」「子育て」「介護」「独身」「子なし」の5つの不安が存在
これらの不安の強さについて、性年代による違いを見ると(詳細は付表1)、性別には大きな違いはないが、年代別には20歳代で「死後不安」や「子育て不安」が強い一方、20歳代で「介護不安」が、60歳代で「死後不安」や「子育て不安」が弱い。「死後不安」が若者で強く高齢層で弱いことは意外なようだが、他の属性も見ると、未婚や子がいない者、世帯年収や世帯金融資産が少ない者、生命保険非加入者で「死後不安」が強い傾向があり、万が一への備えの有無が影響しているようだ。
3――女性の家族形成における不安~年齢とともに結婚や子から介護へとうつる、ライフスタイルで違いも
未婚女性では、既婚女性と比べて「独身不安」や「子なし不安」があるほか、「死後不安」や「介護不安」が長期に渡るため、不安が多い傾向がある。
年代別に見ると、未婚女性では20~40歳代までは「独身不安」や「子なし不安」など家族形成に関わる不安と、おそらく独身であるがゆえに自分の「死後不安」があるが、これらは50歳代で全て消え、「介護不安」のみになる。20歳代の「子育て不安」は将来の子育てに対する漠然とした不安、30歳代の「子なし不安」は出産年齢のリミットが迫る不安なのだろうが、いずれも40歳代で消える。40歳代からは「介護不安」があらわれ、「死後不安」が50歳代で消える。徐々に健康問題を抱える者も増えるために、死後のことより目前に迫る自分の親や自分自身の介護を不安に思いはじめるのだろう。また、人生の折り返しに入り、万が一に対して備え出すために「死後不安」が消えるのかもしれない。
2|既婚で子のいない女性の不安~20~40代で長期に渡り「子なし不安」、60代で相続などの「死後不安」
既婚で子のいない女性では、20歳代で「子育て不安」、40歳代から「介護不安」があらわれる点は未婚女性と同様だが、「子なし不安」が20~40歳代と比較的長期に渡ることが特徴的だ。配偶者がいるためにギリギリまで悩むということなのだろう。
また、サンプル数が少ないため参考値ではあるが、既婚で子のいない女性では60歳代で「死後不安」があらわれる。「死後不安」を構成する6つの変数のうち、どの変数の影響が強いかを見るために、それぞれの不安度(「不安である」「やや不安である」の選択割合の合計値)を見ると、特に「相続が円滑に行われない」(43.5%)や「死後に自分の入るお墓を守る人がいなくなる」(34.8%)、「家が途絶えてしまう」(26.1%)が60歳代の女性全体(13.1%、13.8%、10.6%)と比べて、いずれも2割前後高い。子のいない女性では、後継者がいないことで、60歳代で「死後不安」があらわれるのだろう。
03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
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