2017年10月03日

インドで広がる農家の債務免除

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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■要旨
 
  • インドでは、いくつかの州政府が農家に対する債務免除策を発表したことから、農民らによる債務免除を求めるデモが広がっている。9月には、西部ラジャスタン州で農民の抗議活動が13日間に渡って続き、14日には州政府が総額2,000億ルピー(約3,450億円)の債務免除を発表した。
     
  • 農民の抗議活動の背景には、農家の所得環境の悪化がある。供給過剰によって農産品価格が年初から下落したために、全体の約7割を占める零細農家は今年の収穫を充てに借りたお金の返済が難しくなっているようだ。
     
  • 同政策の経済への影響を考えると、短期的なプラス効果は一定程度認められるが、中長期的な負の影響が大きい。短期的には、返済負担が免除された農家が生産活動を継続できるほか、政府資金によって銀行のバランスシートが改善する。一方、資金を捻出する政府財政は悪化する。また中長期的には、モラルハザードや農業の生産性向上の遅れといった問題がある。
     
  • 農業ローン免除策に対する専門家らの批判は多いが、農業への手厚い政策は人気を集めるのに最も効率が高い手段とされる。2019年の次期総選挙が近づくなか、政府の政策は農村支援など選挙対策色が一段と濃くなってきている。

■目次

・インド各州で広がる農家の債務免除
・農民の経済状況が悪化
・債務免除の功罪
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

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