2017年09月29日

鉱工業生産17年8月-7-9月期は前期比横ばいも、基調は好調が継続

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.上昇、低下を繰り返しながら堅調を維持

経済産業省が9月29日に公表した鉱工業指数によると、17年8月の鉱工業生産指数は前月比2.1%(7月:同▲0.8%)と2ヵ月ぶりに上昇し、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.9%、当社予想は同3.0%)通りの結果となった。出荷指数は前月比1.8%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲0.6%と3ヵ月連続の低下となった。生産指数は16年12月以降、上昇と低下を繰り返しているが、均してみれば上昇基調が維持されている。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 8月の生産を業種別に見ると、国内外の設備投資回復を受けて、はん用・生産用・業務用機械が前月比3.7%の高い伸びとなったほか、輸出、国内販売の好調を背景に輸送機械が前月比2.4%の上昇となった。また、世界的なITサイクル改善から好調が続く電子部品・デバイスは前月比1.8%と2ヵ月連続で上昇し、前年比では17年2月以降7ヵ月連続で二桁の高い伸びとなっている。速報段階で公表される15業種中、11業種が前月比で上昇、4業種が低下した。
財別の出荷動向 財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は17年4-6月期の前期比5.0%の後、7月が前月比▲4.3%、8月が同9.4%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は17年4-6月期の前期比0.8%の後、7月が前月比▲0.7%、8月が同0.6%となった。7、8月の平均を4-6月期と比較すると、資本財出荷(除く輸送機械)は0.2%、建設財は1.6%高い水準にある。

17年4-6月期のGDP統計の設備投資は前期比0.5%と3四半期連続で増加した。企業収益の大幅増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景に設備投資は7-9月期も堅調に推移する可能性が高いだろう。

消費財出荷指数は17年4-6月期の前期比4.0%の後、7月が前月比▲1.4%、8月が同0.0%となった。7、8月の平均は4-6月期よりも▲1.9%低い。個人消費は持ち直しの動きが続いていると判断されるが、7-9月期のGDP統計の民間消費は17年4-6月期には前期比0.8%の高い伸びとなった反動もあり、小幅なマイナスになることが予想される。

2.7-9月期は前期比ほぼ横ばいも、実勢は1%程度の伸びが継続

製造工業生産予測指数は、17年9月が前月比▲1.9%、10月が同3.5%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(8月)、予測修正率(9月)はそれぞれ▲1.3%、▲0.2%であった。
輸送機械の生産、在庫動向 業種別には、9月ははん用・生産用・業務用機械(前月比▲7.5%)、情報通信機械(前月比▲14.1%)の大幅減産が全体を大きく押し下げる一方、10月ははん用・生産用・業務用機械(前月比10.3%)、電気機械(前月比11.6%)が前月比二桁の高い伸びとなるなど、非常に振れが大きくなっている。

一方、実績値が予測指数に近い傾向がある輸送機械が着実な増産計画(9月:前月比0.6%、10月同0.7%)となっていることは好材料といえる。
17年8月の生産指数を9月の予測指数で先延ばしすると、17年7-9月期は前期比0.1%となる。4-6月期の伸び(前期比2.1%)を大きく下回ることは確実で、生産計画が下方修正される傾向があることを考慮すれば、6四半期ぶりに前期比でマイナスとなる可能性もあるだろう。
生産の実勢は前期比1%程度の伸びが継続 ただし、最近の鉱工業生産は月々の振れが非常に大きいため、基調が読みにくくなっており、月次は言うまでもなく四半期ベースの伸びも生産の実勢を必ずしも反映していないことには注意が必要だ。

四半期を1Q(12-2月)、2Q(3-5月)、3Q(6-8月)、4Q(9-11月)、というように通常と1ヵ月ずらした上で前期比を試算すると、16年3Q以降前期比で1%台の伸びを続けており、直近の17年3Qも前期比1.2%となる。

鉱工業生産は基調としては前期比1%台(年率5%程度)と好調な動きが続いていると判断される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2017年09月29日「経済・金融フラッシュ」)

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