2017年09月28日

「人づくり革命」の財源を消費税使途変更で捻出

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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■要旨

安倍晋三首相は9月28日臨時国会冒頭に衆院を解散した。首相は総選挙公約の目玉として2兆円規模となる「人づくり革命」を打ち出した。幼児教育の無償化や高等教育の負担軽減、高齢者中心の社会保障を低所得者・若年者に向ける「全世代型社会保障」の実現を掲げ、財源として消費増税の引き上げ分を充当する方針を打ち出した。

今回首相が打ち出した「全世代型社会保障」の理念には賛成だ。ただし、高齢者と若者への割り振りの是正は行われているとは言いがたい。単に全世代に給付を厚くするというのは政治には痛みを将来世代に先送りし、バラマキとの批判はあって然りだろう。また負担の議論が消えたことで、お金の使い方議論は雑になる可能性は高い。

財政黒字化はこれで先送りとなる。消費税の使途変更はさらなる歳出拡大を招きかねない。財政再建のタガを外さないためにもやるべき財政再建の取り組みは続けなければいけない。

消費税の使途変更は政治的には理解できる面もあるが、経済・財政的には大きな問題を残した。

■目次

1――はじめに:一体改革の消費税の使途を変更
2――幼児教育無償化:消えた負担論
  ・幼児教育無償化の財源問題~小泉進次郎氏の「こども保険」が注目されていた
3――財政再建
 :2020年のPB黒字化を先送り、「再建の旗は降ろしていない」をどうアピールできるか
  ・6月の骨太方針で財政再建の先送りは準備されていた
  ・今年の予算編成、来年の骨太方針決定の過程で財政再建の姿勢が堅持されるのか
  ・日本銀行との共同声明の見直し議論も高まる可能性も
4――おわりに
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総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

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