コラム
2017年09月19日

「えひめ方式」未婚化への挑戦(3)-小規模運営で大きな効果へ・結婚支援IT化への決断

生活研究部 研究員   天野 馨南子

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はじめに

前回のコラム「えひめ方式」未婚化への挑戦(2)-未婚化・少子化社会データ再考-「高卒後男女エリア外流出」の現実において、18歳を皮切りに愛媛県から大量に若い男女(特に男性)が県外に流出し、21歳以降は完全に「女性超過人口県」になることを示した。

高校卒業後、エリアから若い男女が大量にいなくなることによって、愛媛県におけるパートナー探しがそれ以前の年齢において出会えたよりも、かなり難しくなることが確率的にみてとれる。
 
一般社団法人愛媛県法人会連合会(以下、法人会)が愛媛県における結婚支援に立ち上がった背景には地域の深刻な「後継者問題」があることを、えひめ方式」未婚化への挑戦(1)-世界ランキングお年寄り大国第1位日本・少子化社会データ再考-地方を揺るがす「後継者問題」において示した。愛媛県が女性人口超過県であることを示すかのように、やはり協賛企業(法人会の結婚支援活動を理解・応援する企業)の経営者への筆者のインタビューでも、主に聞かれるのは、「(家族経営企業の跡取り)娘のパートナーがいない。いい方はいないか。」という悩みを持ちかけられた、という声があがっている。

法人会の説明によると、愛媛県法人会の結婚支援事業は、結婚支援に取り組み始めた広域参加型エリア事業としては、47都道府県中21番目ということで、決して超早期からの取組というわけではなかった。

しかし、後発エリアであることを活かして、先人たる超早期取組県へヒアリングを行った上で結婚支援活動の「エリアに即したあり方」を考えることができた、というメリットもあった。
 
本稿では、先人からの学びに基づいて、愛媛県というエリアが持つ特性をふまえた上で企画構築された法人会の結婚支援である「えひめ方式」について紹介することとしたい。
 
ちなみに、法人会が運営する「えひめ結婚支援センター」によって成婚に導かれたカップルは、2017年3月末現在ベースで789組(自己申告ベース分のみ)にまで達している。カップリング成立だけでも1万1033組となっている。

財政規模が小さな県における結婚支援への挑戦-先行事例からの学び-

法人会はそもそも、企業の適正な納税指導を行う組織である。ゆえに数ある団体の中でも、コスト意識が非常に高い団体、コスト計算の得意な組織の傾向がある、ともいえる。

法人会は、2008年(平成20年)に結婚支援センターを開設(プレスリリース)した。そして3年後の2011年には、早々に「1対1のお見合い事業のIT化」に踏み切った。
 
IT化の背景の1つは、結婚支援センター・ユーザーからの要望であった。愛媛県は比較的離島の多いエリアであり、また総面積も東京都の2倍以上ある。また人口減少の中で、人口密度に関しては東京都の実に26分の1という状況となっており、「人と人との間に距離がある」ために、そう簡単に出会うことが難しい。そのような中で、早々にセンター・ユーザーから「もっと遠方の男女まで相手探し候補にできないか」という声があがったのは当然ともいえる。
 
そして、県民からの期待に応えるべく、法人会がIT化に踏み切った一番の理由は「先進エリア視察によるヒアリングから得られた以下の2つの知見」であった。
 

i人口が多く自治体等からの潤沢な補助金や運営体の財政体力があるエリアではカップリングの実績はあがっていたものの、同じ規模でえひめの事業としてこれを模倣して実施することは人員・財政面で無理がある

ii先行エリアで支援に予算がかかっているのは伝統的な「人と紙」システムに起因している(作業量と人手がかかる)

iiについては、先行成功事業例では、センターに来る際の電話予約、紙ベースの登録者台帳管理、お見合い希望相手への申し込みの手紙郵送など、全てが人力によって行われていた。
 
視察で得た知見から、法人会は「持続可能性」「低予算」を重視して、初期投資はかかるものの、継続的に運営コストが大きくカットされる「1対1お見合いのマッチングシステム化」(愛結び)の開発に踏み切ったのである。

比較的小規模な、しかも後継者問題など経営の先行きに不安を抱える多くの企業を支える法人会が「運営費低予算」の「センターへの来所予約・登録者情報の閲覧・気に入った相手への申込まですべてIT化」という結婚支援システム化にこだわったことは、極めて適切な判断であったといえるだろう。
 
このような結婚支援のIT化が地域的な事業レベルで行われたのは愛媛県法人会の取組が初めてであり、「愛結び」は全国初の地域結婚支援IT化事例として、いま各地から注目を浴びつつある。

IT化のさらなる挑戦-こだわりの壁打破を目指して-

えひめの「愛結び」が革新的であるのは、「センターへの来所予約・登録者情報の閲覧・気に入った相手への申込まですべてIT化」というシステムの導入後も、さらなる成婚率上昇にこだわり続けていることである。

後継者問題がバックにあるため、「利用者のトライ・エラー・サクセスの軌跡」を可能な限り活かして出会いの確率を少しでも向上させる、ことに結婚支援センターは継続的に注力している。
 
2011年から開始した「愛結び」の利用状況データを活かした更なるカップリング向上を目指し、2014年からは「結婚支援ビッグデータ活用研究会」1が立ち上げられた。

研究会発足当初から研究会リーダーを務める国立情報学研究所の宇野教授によれば、結婚支援センターに登録する支援ボランティア(詳細は次号にて)へのヒアリング等から、以下の2つのタイプの登録者の未婚状態継続に切り込むための、さらなるマッチングシステムの開発可能性がみえたという。
 

1)ワンパターンの行動パターンにはまり込んでしまっていて、今までとは違うタイプの人と出会わない(ために未婚でいる可能性が高い)人

2)カタログスペックで検索して、視野が狭い人(要求項目が固まっていて、検索から外れた人には興味を示さない)(ために未婚でいる可能性が高い)人

宇野氏の上の2つの指摘を、少々強引ではあるが、あくまで一般的なたとえ(注:支援センター登録者とは全く無関係)でわかりやすく説明してみると、
 
1)は、出会いを探しに行く場所や参加するイベントのタイプが限られているような人を指している。「いつも職場恋愛をしているが、結局成婚に至らない」「飲み会にいって探しているが、なかなか誠実な人に出会えていない」パターンの人などが挙げられる。
 
2)は、「とりあえず、まずは何が何でも20代女性希望」の男性、「とりあえず、まずは何が何でも大卒男性希望」の女性、などが挙げられる。
 
この2つの指摘はどちらも人間のこだわりに深く起因している、といってもよいだろう。
 
1)は特定行動パターンへのこだわり(無意識行動も含む)、2)は相手の特定スペックへの強いこだわり、である。
 
この「こだわりの壁」を打破しない限りは、成婚にいたるどころかカップリングも難しい、と現場ボランティアから見て感じるケース、または本人はそのこだわりを隠しているが、利用状況から見て実際はものすごくこだわっている登録者等に関しては、マッチングシステムの追加機能開発でなんとかなるかもしれない、というのが同研究会の最初の開発テーマとなった。
 
次号以降では、マッチングシステムの機能の向上内容や利用上のありがちな誤解について、紹介・考察していきたい。
 
 
(続きは 「えひめ方式」未婚化への挑戦(4) のリリースをお待ち下さい)
 
 
1 国立情報学研究所 宇野毅明 教授がリーダーとなり、愛媛県と東京都の研究者を広く巻き込んだ形の研究会である。筆者は2016年からのメンバーで、研究会は2017年現在も継続中。
2016年度の研究会の詳細は下記サイト参照のこと。
https://www.msc-ehime.jp/contents/bigdata/study_group/index.html
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生活研究部   研究員

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
少子化対策・女性活躍推進

(2017年09月19日「研究員の眼」)

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