2017年09月11日

EIOPAのソルベンシーIIレビューに関するCPに対する反応-欧州保険業界団体からの意見-

中村 亮一

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1―はじめに

ソルベンシーIIのレビューに関しては、欧州委員会から受けた技術的助言要求項目に対して、EIOPA(欧州保険年金監督局)が検討を行い、2017年7月4日に、「ソルベンシーII委任規則の特定項目に関する欧州委員会へのEIOPAの第1の助言セットに関するコンサルテーション・ペーパー」1(以下、「今回のCP」と言う)を公表した。この点については、基礎研レポート「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットについてのCPを公表(1)-欧州委員会に対する助言内容-」(2017.8.21)及び「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットについてのCPを公表(2)-政策オプションの影響評価-」(2017.8.22)で報告した。

そのレポートの中で述べていたように、今回のCPに対しての関係者からのフィードバックの締切りが9月1日となっていた。欧州の保険業界団体であるInsurance Europeが、9月4日に今回のCPに対する意見を公表2したので、その内容を報告する。  

2―Insurance Europeの意見の概要

2―Insurance Europeの意見の概要

ここでは、Insurance Europe(保険ヨーロッパ)の意見の概要について、プレスリリース資料に基づいて報告する。

1|全体的な評価
全体的には、今回のソルベンシーIIのレビューについて歓迎し、各種の提案において進歩があったと認めているが、レビューの目的を達成するためには、いくつかの分野で追加の作業が必要である、と述べている。
2|各項目へのコメント
簡略化された計算に関するアプローチについては、法律文に記載されている簡素化法のみが認められているというEIOPAの見解を支持しておらず、EIOPAは大量の解約リスクのレベルに対処する必要がある、としている。

標準式における外部信用評価機関(ECAI)への依存の軽減については、EIOPAの委任規制の一部を簡略化する代替案を歓迎するが、この簡素化の使用を認めるための過度に慎重なアプローチが、実際にはそれを実行可能でなくする可能性がある、と警告した。

保証、第三者によって保証されたエクスポージャー、地域政府及び地方自治体(RGLAs)へのエクスポージャーの取扱に関して、銀行と保険の規制の間の適格RGLAsのリストを調和させることについては、RGLAsと中央政府間の同等性を判断するために、過度にきめ細かで堅固なアプローチを導入することになるとの注意を発している。

関連会社へのルックスルー・アプローチの拡大は歓迎するが、ルックスルー・アプローチの適用を比例的な方法で確実に実施するためには、追加作業が必要である、とした。

繰延税金の損失吸収能力(LAC DTに関しては、現在欧州に適用されている様々な方法とその影響を報告することで、EIOPAはその任務を十分に果たしており、それ以上の行動は必要ない、としている。さらに、LAC DTのドライバーについてEIOPAが行った分析は、問題の完全な描写を提供しておらず、結論を出す際には注意が必要である、としている。

Insurance Europeのプレスリリースの内容は、以下の通りである。

ソルベンシーIIレビューに関するEIOPAの第1の助言セットについての反応

保険ヨーロッパは、ソルベンシーIIの今後のレビューに関して欧州保険年金監督局(EIOPA)から受け取った第1の助言セットについての欧州委員会のコンサルテーションに応えている。

EIOPAがレビューの目標を達成するために行った進展を認めながら、保険ヨーロッパは、その目的を達成するためのレビューにおいて、いくつかの分野で追加の作業が必要であると述べた。

例えば、繰延税金の損失吸収能力(LAC DT)に関して、保険ヨーロッパは、EIOPAは、現在欧州に適用されている様々な方法とその影響を報告することにより、その任務を十分に果たしており、それ以上の行動は必要ない、強調した。しかし、保険ヨーロッパは、LAC DTのドライバーについてEIOPAが行った分析は、問題の完全な描写を提供しておらず、結論を出す際には注意が必要であると付け加えた。

導入された簡略化されたアプローチを歓迎しながら、保険ヨーロッパは法律文に記載されている簡素化法のみが認められているというEIOPAの見解を支持していないと述べた。さらに、保険ヨーロッパは、EIOPAの意見とは対照的に、EIOPAは大量の解約リスクのレベルに対処する必要があると考えていると強調した。

保険ヨーロッパはまた、EIOPAの関連会社へのルックスルー・アプローチの拡大に関する作業を歓迎した。しかし、ルックスルー・アプローチの適用を比例的な方法で確実に実施するためには、追加作業が必要であることが推奨される。

保険ヨーロッパは、標準式の外部信用評価機関(ECAI)への依存を減らすことで、EIOPAの委任規制の一部を簡略化する代替案を見つける作業を歓迎した。しかし、保険ヨーロッパは、この簡素化の使用を認めるための過度に慎重なアプローチが、実際にはそれを実行可能でなくする可能性があると警告した。

保険ヨーロッパは、EIOPAの提案された変更の多くをサポートしながら、保証、第三者によって保証されたエクスポージャー、地域政府及び地方自治体(RGLAs)へのエクスポージャーの取扱に関して、銀行と保険の規制の間の適格RGLAsのリストを調和させることに注意を勧告した。これは、RGLAsと中央政府間の同等性を判断するために、過度にきめ細かで堅固なアプローチを導入することになると信じている。

 

3―Insurance Europeの意見の具体的内容

3―Insurance Europeの意見の具体的内容

この章では、Insurance Europeの意見の具体的内容について報告する。2と重複する部分もあるが、補足説明を含めて、より詳しくその内容を報告する。

1|全体的な評価
保険ヨーロッパは、今回のレビューの主な目標である「保険会社の(再)保険会社に対する比例的かつ技術的に一貫した監督体制を確保し、ソルベンシー資本要件の公式を簡素化し、要件の比例的な適用を確実にすること」を支援する、としている。

全体的には、今回のソルベンシーIIのレビューについて歓迎し、各種の提案において進歩があったことを認めているが、レビュープロジェクトに最適な結果を達成するためには、多くの分野で追加の作業が必要である、としている。

具体的には、以下の通り述べている。

保険ヨーロッパは、ソルベンシーII規制の枠組みの最初のレビューを歓迎し、以下のその主な目標を支援する。

・(再)保険会社に対する比例的かつ技術的に一貫した監督体制を確保すること。そして
・SCR標準式の可能な簡素化を探求し、要件の比例的な適用を保証すること。

保険ヨーロッパは、EIOPAが最初の助言セットの中で概要説明された提案を通じて、これらの目標を達成するための進歩があったことを認めている。しかし、レビュープロジェクトに最適な結果を達成するためには、多くの分野で追加の作業が必要であると考えている。例えば、保険ヨーロッパは、LAC DTの分析は問題の完全な描写を提供していないと考えており、この分析から結論を引き出す際には注意が必要であると考えている。

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中村 亮一

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