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- 最近の人民元と今後の展開(2017年9月号)~党大会後の人民元レートはどうなるのか?
1――8月の人民元の動き
世界の外為市場の動きを見ると、8月はユーロも米ドルに対して上昇傾向を続けた。世界の金融関係者の注目を集めたジャクソンホール会議(8月24-26日、米国ワイオミング州)では新たな手掛かりを得られなかったものの、米国では9月19-20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で保有資産の縮小に早期に着手(9月の追加利上げは無し)、欧州では9月か10月の欧州中央銀行(ECB)理事会で量的緩和の縮小を決める(実施は18年1月以降)との市場コンセンサスが維持されたことを背景に、4月以降のユーロ高の流れを引き継いで、ユーロが米ドルに対して上昇することとなった(図表-2)。
2――今後の展開
米中の経済金融動向を考えると、中国政府(含む中国人民銀行)は16年秋以降、住宅バブル退治に乗り出したため、景気指標の一部には陰りが見え始めた。しかし、17年1-6月期の実質成長率が17年目標(6.5%前後)を大幅に上回るなど、景気の勢いは想定以上に強く、住宅バブル膨張も続いているため、年内にも基準金利を引き上げる可能性があると見ている。他方、米国では景気拡大が持続しており、今後も段階的に政策金利を引き上げると見られる。しかし、トランプ政権への期待が萎むとともに米国の長期金利は低下、米中の長期金利差は縮小しない可能性が高まってきた(図表-7)。従って、米ドルに対する人民元レートはボックス圏でほぼ横ばいの動きと予想している。
但し、ユーロドルが上昇の勢いを強めるようだと、10月18日開会の党大会後にも15年8月とは逆方向の「人民元ショック」が起きて、人民元が米ドルに対して急上昇し、想定レンジの上限(1米ドル=6.5元)を突破するリスクが依然として残る。約3年前の14年に急落したユーロドルは、その後1ユーロ=1.1米ドルを中心とした狭いレンジで推移してきたが、この7月にはレンジの上値抵抗線をブレイクした(図表-2)。欧州政治の混乱に対する不安感が薄れたことでユーロに対する信認が回復したこと、内需の好調に加えてここもとのユーロ安が欧州経済を支援して景気が回復してきたこと、そして量的緩和の縮小が視野に入ってきたためと考えられる。月間ローソク足を見ても、17年3月以降6ヵ月連続で“陽線”となっており、ユーロの買い戻し圧力は強い。しかし、ユーロがさらに上昇すれば、回復基調にある欧州経済に水を差しテーパリングが危うくなる。8月のローソク足を見ても、“上ヒゲ”、“下ヒゲ”ともに長く、市場の気迷いを反映している(図表-8)。従って、想定レンジの上限までの値幅はやや小さいものの、想定レンジは1米ドル=6.5~6.9元のまま維持することとした。
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三尾 幸吉郎
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(2017年09月04日「基礎研レター」)
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