2017年09月07日

ふるさと納税における競争は年々激化する-抜け道を完全に封鎖できるか?

基礎研REPORT(冊子版)9月号

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   高岡 和佳子

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平成29年度ふるさと納税に関する現況調査によると、平成28年度のふるさと納税
額は2,844億円で、対前年度1.7倍となった。前年度の4.3倍と比較すると、増加割合
は小さいが、増加額は1,191億円で、前年度の1,264億円と大差ない[図表1]。その裏
で、市区町村間の競争は激化している。
図表1:ふるさと納税受入額の推移
平成28年度受入額上位5の市区町村と、対前年度増加額が最下位の市区町村は図表2の通りである。上位5の市区町村のうち4市区町村は2年度連続上位にランクインしていることから、「勝ち組」市区町村が固定されているように見える。その中、都農町は、前年度48位から4位に躍進し、大多喜町は前年度12位から154位に後退した。今回は、その背景を紹介する。
図表2:ふるさと納税受入額上位の市区町村他
平成27年度、大多喜町には19億円のふるさと納税が集まった。多額の寄付金が集中した理由として「ふるさと感謝券」が考えられる。ふるさと感謝券とは、大多喜町の指定されたお店などに限り利用が可能な商品券である。1万円の寄附に対し7千円分のふるさと感謝券が送付され、その還元率の高さから、当時マスコミで数多く取り上げられた。しかし、平成28年4月の総務大臣通知において、ふるさと納税制度の趣旨に反する返礼品として商品券が例示され、ふるさと感謝券の受付はその翌月末をもって終了した。

今年の4月に、寄附額に対する返礼品の調達価格を3割以下とするよう、総務大臣通知が出されたことは、御存知の方も多いだろう。では、この通知において、ふるさと納税制度の趣旨に反する返礼品として、「ふるさと納税事業を紹介する事業者等が付与するポイント」が例示されたことは御存知だろうか。実は、都農町の躍進はこの例示と大きく関係している。

某大手ECサイトとの仕組みが功を奏し、都農町には多くの寄附金が集まったと考えられる。そのECサイトからふるさと納税を行うと、返礼品とは別に、ECサイトで利用可能なポイント(寄附額の10%分)が貰える仕組みだ。以前から、返礼品の価格の割合を表示することも、金銭類似性の高いポイントを返礼品とすることも、納税制度の趣旨に反する行為として明示されている。しかし、いずれも返礼品に関する記述であって、ふるさと納税事業を紹介する事業者等が付与するポイントについては、なんら言及されていなかった。某大手ECサイトと都農町など一部の市区町村はこの隙を突いたのだ。

先月、ふるさと納税事業を紹介する某事業者が、別の大手ECサイトで利用可能なギフト券を1,000円分プレゼントするキャンペーンを行っていた。「ふるさと納税事業を紹介する事業者等が付与するポイント」ではなく、「ふるさと納税事業を紹介する事業者が贈呈する他のECサイトで利用可能なギフト券」というのが、新たな抜け道なのだろうか。
図表3:趣旨に反する返礼品として明示される範囲の拡大
市区町村やふるさと納税事業を紹介する事業者等の知恵には感服する。総務大臣通知で、ふるさと納税制度の趣旨に反する返礼品に関する新たな文言を追加しても、抜け道を完全に封鎖する事は不可能ではないか。そもそも、寄付金とは「経済的利益の無償の供与」である。それゆえ、返礼品の送付は寄附の対価としてではなく、別途の行為として行われているという建前である。大多数の寄附者が、寄附の申し込みと同時に、受領する返礼品等を選択している現状を踏まえると、その建前に無理はないか。ふるさと納税制度が始まってから来年で10年経過する。ふるさと納税制度を健全に発展させていくためにも、そろそろ「いたちごっこ」をやめて、制度全体を見直すべき時期が来ているのではないだろうか。
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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

(2017年09月07日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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