2017年08月22日

EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットについてのCPを公表(2)-政策オプションの影響評価-

中村 亮一

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4|リスク軽減技術の評価とそれに対する考え方の明確化
(1)政策オプション
3つの政策課題を挙げて、それぞれに対して、複数のオプションを検討した。

「政策課題1:エクスポージャー調整の頻度」については、オプション1.1(エクスポージャー調整の頻度に制限無し)、オプション1.2(一定の最大頻度(例えば、四半期、月次又は週単位)によるエクスポージャー調整の可能性)、オプション1.3 (あらかじめ定義された追加のエクスポージャー調整と組み合わせての固定された最大頻度でのエクスポージャー調整の可能性)の3つのオプションについて検討した。

「政策課題2:契約の満期」については、オプション2.1(契約の満期に制限無し)とオプション2.2 (契約の満期に制限有り)の2つのオプションを検討した。

「政策課題3:再保険会社がSCRに準拠しなくなった場合の再保険の認識」については、オプション3.1 (再保険会社がSCRに準拠しなくなった場合の認識は無し)とオプション3.2 再保険会社がMCRに準拠しなくなった場合を除き、期間限定の部分認識)の2つのオプションを検討した。

9.7.1.政策オプション
647.EIOPAは、リスク軽減技術に関するこの助言の開発中、異なる選択肢が検討され議論される3つの主要な政策課題を特定した。
•政策課題1:エクスポージャー調整の頻度
•政策課題2:契約の満期
•政策課題3:再保険会社がSCRに準拠しなくなった場合の再保険の認識

648.最初の2つの政策課題は、ローリングヘッジに関する技術的助言に関連している。

政策課題1:エクスポージャー調整の頻度
649.委任規則第209条(3)は、リスク軽減技術の置き換えが3ヶ月毎よりも頻繁に行われていない(及び他の基準が満たされている)ことを条件に、契約の取決めが12カ月未満で有効なリスク軽減技術の完全な認識を可能にする。「リスク軽減手法」という用語の法的定義がないため、第209条(3)に基づいて認められている調整に関する不確実性がある。

650.調整の理由は様々である。まず、(再)保険会社のリスクエクスポージャーが変化した可能性がある。第2に、リスク軽減のために使用された契約が解約される可能性がある。第3に、他の契約や契約の変更がより有利かもしれない。

651.調整の頻度の制限は、更新のリスクを低減し、上記の条件が満たされているかどうかの評価を簡素化する。同時に、このような規制は、保険会社が適時にリスクポジションの変化に対してリスク軽減を調整することを妨げる可能性がある。

652.以下、「エクスポージャー調整」という用語は、保険会社がヘッジポジションの変化を反映するために、新たな契約を締結し、契約を(完全に又は部分的に)終了し、相殺する契約を結ぶ状況を意味している(例えば、より多くの株式Xが購入されたため、株式Xに関する追加的な短期先物契約を結ぶこと)。

653.考慮すべき1つの課題は、エクスポージャー調整をどのくらいの頻度で許容するのかということである。この点で、以下のオプションが考慮されている。
a.オプション1.1 – エクスポージャー調整の頻度に制限無し
b.オプション1.2 - 一定の最大頻度(例えば、四半期、月次又は週単位)によるエクスポージャー調整の可能性
c.オプション1.3 - あらかじめ定義された追加のエクスポージャー調整と組み合わせての固定された最大頻度でのエクスポージャー調整の可能性

政策課題2:契約の満期
654.考慮すべきもう一つの課題は、使用された契約の満期に何らかの制限があるべきかどうかである。 この点で、以下のオプションが考慮されている。
a.オプション2.1 - 契約の満期に制限無し
b.オプション2.2 - 契約の満期に制限有り

政策課題3:再保険会社がSCRに準拠しなくなった場合の再保険の認識
655.再保険会社がSCRに準拠しなくなる再保険契約については、委任規則第211条第3項により、一定の条件が満たされれば例外的な部分認識が認められている。ステークホルダーは、(再)保険会社がこれが事実であることを実証することは難しいかもしれない、と指摘した。

656.潜在的な保護が不十分であることと、合理性のタイムリーな修復の場合には不必要な悪影響が生じる可能性があることのバランスを取らなければならない。

657.これに基づいて、以下のオプションが検討されている。
オプション3.1 - 再保険会社がSCRに準拠しなくなった場合の認識は無し
オプション3.2 再保険会社がMCRに準拠しなくなった場合を除き、期間限定の部分認識

(2)オプションの比較
分析の結果、以下の通りとしている。

・政策課題1(エクスポージャー調整の頻度)に関しては、エクスポージャー調整のオプション1.3(固定された最大頻度とあらかじめ定義されたトリガーの組み合わせ)が好ましい。

・政策課題2(契約の満期)に関しては、オプション2.2(制限有り)が好ましい

・政策課題3(再保険会社がSCRを遵守しなくなった場合の再保険の認識)に関しては、オプション3.2(再保険会社がMCRに準拠しなくなった場合を除き、期間限定の部分認識)が好ましい。

9.7.3.オプションの比較
672.政策課題1(エクスポージャー調整の頻度)に関しては、エクスポージャー調整のオプション1.3(固定された最大頻度とあらかじめ定義されたトリガーの組み合わせ)が好ましい。あらかじめ定義されたエクスポージャー調整は、例外的な状況におけるエクスポージャー調整の柔軟性を提供するが、通常の固定最大頻度は複雑さを制限する。

673.政策課題2(契約の満期)に関しては、契約の満期制限に関するオプション2.2(制限有り)が好ましい選択肢である。これにより、更新リスクが制限されるが、選択された最小満期の不利な可能性はあまり重要ではないようだ。

674.政策課題3(再保険会社がSCRを遵守しなくなった場合の再保険の認識)に関しては、オプション3.2(再保険会社がMCRに準拠しなくなった場合を除き、期間限定の部分認識)が好ましい。SCRの一時的な「急激な上昇」は有意義なマイナスの影響をもたらす可能性があるが、再保険の一時的な部分認識に関連するリスクは受け入れられるようだ。

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中村 亮一

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