このような生物学的要因へアプローチをサポートする「社会的環境づくり」の方法を検討した3章の重回帰分析のデータ結果からは、
東京都の少子化に効果がある社会的環境要因整備はまず何より、
i「こどもが少ないエリアに生まれ育つ人々のイマジネーションの壁の打破(前章○1示唆)」
であり、また、子どもが少ないエリア改善のための環境整備は
ii「過密化の打破(○3示唆)」
iii「伝統的な家族形成・性別役割分担観の打破(○2、○5、○6、○8示唆)」
であるようにみえる。
本分析で東京都の少子化対策になんらかの社会的環境改善提案がさらにできることがあるとすれば、まず、
東京都だけで全国最低値の少子化を脱することは容易ではないと言うことであろう。
東京の過密化は、パリ、ニューヨーク、ロンドンなど世界の大都市間で見ても突出したレベルであり、この原因となっているのは東京都と地方との人口吸引力の差であることは異論がないだろう。
東京都に社会増加を絶え間なく贈り続けてきた地方部の変革こそが、地方部自身だけでなく、東京都を救うことになるかもしれない。
現在、平行してある地方県数エリアの出生率分析も行っているが、あるエリアでは人口の流出入が激しいことが出生率の低下、すなわち少子化の原因となっている。高卒後若者が大量に東京都や大阪府にでてしまい、別のエリアから人口を補填する。結果、「安定しないエリアの人々の顔」が出生率を引き下げる。
「地方の過疎と東京の過密化」
これは相互に、少子化ならびにエリア内における「縮小均衡の未来」しか生まない、現時点ではそのような分析結果のようにみえる。
そして、上述の3つの打破の最後の部分の詳細になるが、
伝統的家族形成感の打破として、
離婚に対するネガティブ意識の打破、家庭料理にこだわらない外食文化への理解
掃除等家事負担の全般的な軽減、保育園に子どもを預けることへの理解
が出生率を引き上げると示唆されていように思われる。
一億総発言社会の中でもデータは雄弁に多弁に、しかし、そこになんら特定のライフコース礼讃も感情もなく、語り続けているのかもしれない。
データたちの声が、海外からも絶滅の危惧の声があがる日本の人々のそれぞれの胸に少しでも何かしら響くことを願うばかりである。