2017年08月09日

景気ウォッチャー調査(17年7月)~盛夏商材の売れ行きが好調も、九州北部豪雨の影響で景況感は小幅の悪化~

白波瀨 康雄

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3.景気の先行き判断DI(季節調整値):4ヵ月ぶりの悪化も、節目となる50は上回る。

先行き判断DI(季節調整値)は50.3(前月差▲0.2ポイント)と小幅ながら4ヵ月ぶりの悪化となった。先行きの景況感は2017年度に入り持ち直しており、2ヵ月連続で節目となる50の水準を上回っている。先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連(同▲0.4ポイント)、企業動向関連(同▲1.2ポイント)が悪化したが、雇用関連(前月差+3.2ポイント)は大きく改善した。
景気の先行き判断DI(季節調整値)/景気の現状判断DI(分野別、季節調整値)
家計動向関連では、「2~3か月先は、旅行業界にとって秋の旅行シーズンとなり、法人、教育旅行、個人等全ての分野でピークを迎える。また、予約状況も良好と聞いている」(南関東・旅行代理店)や「秋口の旅行申込は順調で、特に国内団体客が好調である。社員旅行を始め創業記念旅行も増えてきており、企業には福利厚生に金をかける余裕が生まれている」(東海・旅行代理店)など秋に向けた観光需要の盛り上がりを見込むコメントが目立った。一方で、「春夏物に加えて秋物も入荷し、多少は良くなるだろうが売上は変わらないのではないか。来客数、販売量、客の動き等をみる限り、あまり変わらない」(四国・衣料品専門店)や「景気が上向きになる材料が地域経済に見当たらず、客の消費行動が変わる見込みは薄い」(中国・スーパー)など、今以上に景気の改善が見込めないとう慎重なコメントも目立った。

企業動向関連では、「企業の業績改善を背景に、設備投資は増加傾向となっている。さらに、設備投資の中身はこれまでの維持補修関係の投資から、増産や合理化のための投資にシフトしつつある。ただし、賃金上昇や人手不足が引き続きの課題となっており、働き方改革を中心とした人材への投資が急務である」(北陸・一般機械器具製造業)や「化粧品容器、医療品容器の新規案件が引き続き入ってきているため、2~3か月後の完成を目指して設備投資に踏み切ったところである」(南関東・プラスチック製品製造業)など、増産や生産性向上に向けた設備投資に言及するコメントがみられた。一方で、「受注案件はあるものの、人手不足が解消されないため、仕事量の調整などの対応に苦慮している」(東北・金属工業協同組合)や「10月に最低賃金の見直しがあるので、人件費が高騰する。人手不足も重なり、募集単価の上昇が見込まれるが、既存の契約単価が上がらないので厳しくなる」(南関東・その他サービス業[ビルメンテナンス])など、人手不足やそれに伴う人件費高騰を懸念するコメントがみられた。

雇用関連では、「人材不足を背景に、依頼内容を緩和したり職場環境の改善で定着を高めるなど、求職者にとって魅力的な材料が増えてきており、成約数の伸びが期待される」(南関東・人材派遣会社)や「人手不足感がより一層強まり、求人条件を見直す事業所も増えてきている。少しずつではあるが、労働条件の改善が見受けられる」(東海・職業安定所)など、人手不足が深刻化するなか人材を確保するため、求人条件を見直す企業が増えてきているようだ。

景況感は2017年度に入り、持ち直しの動きがみられる。先行きについても、これ以上の改善は期待できないという慎重な姿勢がみられるものの、設備投資の回復が期待できることに加え、人手不足が深刻化するなか人材確保に向けて求人条件を見直すなど雇用所得環境の改善が一段と期待できる。一方で、九州北部豪雨の影響は徐々に剥落していくだろうが、依然避難生活を送っている住民も多く、復旧作業は十分に進んでいないことから、今後も景況感改善の重しになるだろう。
 
 

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白波瀨 康雄

研究・専門分野

(2017年08月09日「経済・金融フラッシュ」)

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