2017年08月04日

ユーロ急騰、持続性はあるか?~金融市場の動き(8月号)

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. (トピック) 4月以降、ユーロの上昇が続いているが、ユーロ上昇の持続性について筆者はかなり懐疑的にみている。ユーロ相場は足元で過熱感(前のめり感)が強まっているほか、ユーロ高は景気・物価の下振れ圧力になるため、今後ECBがけん制を打ち出したり、出口戦略に対する慎重姿勢を強めたりすることで、ユーロ安圧力が強まる可能性がある。さらに、テーパリングの通貨高効果にも疑問がある。FRBのテーパリング時には、決定後数ヶ月にわたってドルが横ばいで推移した。ECBのテーパリングも、時間をかけて段階的に、ある程度予見可能な形で実施され、テーパリング終了後は利上げまでしばらく間が空きそうだ。従って、テーパリング決定(弊社見通しでは10月と予想)後はユーロの浮力が弱まる可能性が高い。そして、ドルの持ち直しもユーロ高圧力を緩和する。現在、ユーロが積極的に買われている背景には、ドル売りの裏返しという側面がある。「ドルを売るためには何か別の買う通貨が必要」になり、ユーロが選ばれている状況だ。米経済・物価については、堅調な雇用情勢に加えて最近のドル安・米株高も支援材料となることで、今後持ち直していく可能性が高い。それに伴って、ドル高圧力も徐々に増していくと見ている。このことは、ユーロ買い圧力を緩和する方向に働く。以上より、ユーロドルは10月にかけて高止まりした後、弱含むと予想している。一方、ユーロ円は、日欧金融政策の方向性の違いから今後も緩やかな上昇に向かうと見ている。
     
  2. ただし、もし米国経済・物価の低迷が長引き、ドル売りが続く地合いとなれば、「それなりに買う理由を見出せる」ユーロに需要が集中し、思いのほかユーロ高が進むという展開になることも有り得る。9月末に期限を迎えるとされる米債務上限問題も、緊迫化すればドル安をもたらすだけに動向が注目される。
ユーロの対ドル・対円相場
■目次

1.トピック:ユーロ急騰、持続性はあるか?
  ・2段ロケットでユーロは上昇
  ・ユーロ相場は過熱気味
  ・ユーロ高の悪影響
  ・テーパリングの通貨高効果への疑問
  ・ドルの方向性も大きなポイントに
2.日銀金融政策(7月):物価目標の達成時期をまたも先送りに
  ・(日銀)現状維持
3.金融市場(7月)の動きと当面の予想
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

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