2017年07月28日

中国経済:2017年上期を総括した上で今後の注目ポイントを探る

三尾 幸吉郎

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1.GDP統計

(図表-1)中国の実質成長率の推移 中国国家統計局が7月17日に公表した2017年上期(1-6月期)の国内総生産(GDP)は38兆1490億元(日本円換算では約630兆円)となった。成長率は実質で前年比6.9%増と16年通期の同6.7%増を0.2ポイント上回った。2011年以降6年連続で前年の伸びを下回る状況となっていたが、17年末までこの成長率が維持できるようだと、7年ぶりに前年の伸びを上回ることになる(図表-1)。
(図表-2)中国の実質成長率(産業別) 経済構造の変化も静かに進んでいる。

産業別に見ると、第1次産業の実質成長率は前年比3.5%増と16年通期の同3.3%増を0.2ポイント上回った。しかし、数年前まで4%台だった成長率はここ2年半3%台へ低下しており、トレンドとしては緩やかな減速傾向にある。第2次産業の実質成長率は同6.4%増と16年通期の同6.1%増を0.3ポイント上回った。2010年の同12.7%増をピークに6年連続で前年の伸びを下回るなどここもとの景気減速の主因だったが、17年上期には持ち直した。また、第3次産業の実質成長率は同7.7%増と16年通期の同7.8%増を0.1ポイント下回った。第3次産業もやや減速気味ではあるが、その減速ピッチは緩やかで、第2次産業の伸びを4年半に渡り上回るなど、全体が景気減速する中でも中国経済を下支えしている(図表-2)。
(図表-3)中国の実質成長率(需要別) 一方、需要別に見ると、純輸出は0.3ポイントのプラス寄与と16年通期の▲0.5ポイントからプラスに転じた。リーマンショック後には3年連続で大幅マイナス寄与したが、その後は0.5ポイント以下の小幅な寄与に留まっている。総資本形成は2.3ポイントのプラス寄与と16年通期の2.8ポイントを下回った。2009年の8.1ポイントをピークに低下傾向が続いている。最終消費は4.4ポイントのプラス寄与と16年通期の4.3ポイントをやや上回った。最終消費は安定的にプラス寄与する傾向が続いている(図表-3)。
 

2.供給面

2.供給面

工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)の動きを見ると、17年上期は前年比6.9%増と16年通期の同6.0%増を0.9ポイント上回った。2011年以降、工業生産は6年連続で前年の伸びを下回ってきたが、17年上期はその鈍化傾向に歯止めが掛かったことになる(図表-4)。また、業種別の内訳を見てみると、鉱業は前年比1.0%減、鉄精錬加工は同0.5%増と全体の伸びを押し下げる要因となった一方、コンピュータ・通信・その他電子設備は同13.9%増と全体の伸びを押し上げる要因となった(図表-5)。過剰生産設備を抱える石炭や鉄鋼などが引き続き足かせとなってはいるものの、IoT関連の生産が新たな牽引役として浮上、今後の動向が注目される。
(図表-4)工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)の推移/(図表-5)工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上、2017年1-6月期)の推移
また、製造業PMIの動きを見ると、16年上期までは拡張・収縮の境界となる50%を挟んだ動きだったが、16年下期には上昇し始め、17年上期は51.2%~51.8%の範囲で一進一退、ほぼ横ばいとなった(図表-6)。一方、非製造業PMI(商務活動指数)を見ると、16年2月の52.7%をボトムにして緩やかな上昇傾向が続いており、17年3月には14年6月以来となる55%台を一時的に回復、その後は横ばい圏で推移している(図表-7)。
(図表-6)製造業PMI/(図表-7)非製造業PMI

3.需要面

3.需要面

(図表-8)小売売上高の推移 消費の代表指標である小売売上高の動きを見ると、17年上期は前年比10.4%増と16年通期の同10.4%増から横ばいで推移している。電子商取引(EC)が同33.4%増と高い伸びを維持して消費を刺激したほか、飲食は同8.4%増と16年通期の同6.0%増を2.4ポイント上回り、同様に衣類は0.3ポイント、化粧品は3.0ポイント、家電類1.7ポイント、家具類は0.7ポイントそれぞれ上回った。しかし、17年上期は自動車が前年比5.2%増と16年通期の同10.1%増を大きく下回ったことで、全体の伸びは横ばいに留まった(図表-8)。
(図表-9)固定資産投資(除く農業の投資)の推移 投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)の動きを見ると、17年上期は前年比8.6%増と16年通期の同8.1%増を0.5ポイント上回った(図表-9)。内訳を見ると、インフラ投資は前年比21.1%増と極めて高い伸びを示し16年通期の同17.4%増を3.7ポイント上回った。また、15年には住宅市場が崩れたことで前年比1.0%増と落ち込んだ不動産開発投資も16年には同6.9%増、17年上期も同8.5%増と緩やかに回復してきた。また、2012年以降5年連続で前年の伸びを下回るなど不振が続いていた製造業も17年上期はIoT関連が牽引役となって同5.5%増と16年通期の同4.2%増を1.3ポイント上回った。
(図表-10)輸出額(ドルベース)の推移 海外需要の代表指標である輸出額(ドルベース)の動きを見ると、17年上期は前年比8.5%増と15年通期の同2.9%減、16年通期の同7.7%減からプラスに転じた(図表-10)。景気回復が続いている米国、欧州EU、日本など先進国向けの輸出が好調だったほか、その恩恵を受けるASEAN向けも好調だった。また、輸出の先行指標となる新規輸出受注(製造業PMI)と貿易輸出先行指数がともに改善傾向にあることから、今後もしばらくは輸出の好調は続く可能性が高いと見られる。
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三尾 幸吉郎

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