2017年07月14日

景気好調下で弱まる物価の基調~既往の円高と個人消費の弱さが物価を下押し

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■要旨
  1. 実質GDPが5四半期連続で潜在成長率とされるゼロ%台後半を上回るなど景気は好調を維持しているが、日本銀行が重視している「生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)」の上昇率がゼロ%程度で推移するなど、物価の基調はむしろ弱まっている。
     
  2. 景気好調下で物価の基調が弱まっている理由としては、まず既往の円高の影響が挙げられる。近年の消費者物価は、輸入浸透度の上昇を背景に耐久消費財を中心に為替変動の影響を強く受けるようになっている。2016年前半の円高がラグをもって足もとの消費者物を下押ししている可能性が高い。
     
  3. また、GDPギャップは大きく改善しているものの、企業の価格決定により大きな影響を及ぼすと考えられる個人消費が低調に推移していることも物価の上昇圧力が高まらない一因になっている可能性がある。
     
  4. エネルギー価格の上昇率は2017年秋頃まで高まるが、円高による下押し圧力がしばらく残るため、先行きのコアCPIの上昇ペースは緩やかにとどまる可能性が高い。コアCPI上昇率が1%に達するのは、円安が物価の押し上げ要因となる中で、個人消費の回復によって需給面からの押し上げ圧力が高まる2018年度後半となるだろう。
     
  5. 近年、消費者物価に対するGDPギャップの感応度が低下する一方、為替の感応度が大きく上昇している。このため、先行きも消費者物価が為替変動に左右されやすい展開が続くことが予想される。
コアコアCPIに対するGDPギャップ、為替レートの弾性値
■目次

●景気好調下で弱まる物価の基調
  ・既往の円高が物価を押し下げ
  ・需給バランスの改善が物価上昇につながりにくい理由
  ・GDPギャップの感応度低下、為替の感応度上昇
  ・需給、為替要因による物価押し上げは当面期待できず
  ・エネルギー価格の上昇率は2017年度末にかけて急低下
  ・コアCPI上昇率が1%に達するのは2018年度後半か
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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