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抜け道を完全に封鎖できるか?-ふるさと納税における競争は年々激化する
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
7月5日の朝日新聞(朝刊)によると、都農町の某大手ECサイトとの仕組みが功を奏したらしい。そのECサイトからふるさと納税を行うと、返礼品とは別に、そのECサイトで利用可能なポイント(寄附額の10%分)が貰える仕組みだ。平成27年1月の事務連絡から、返礼品の価格の割合を表示することは自粛するよう要請されており、平成28年4月の総務大臣通知においては、金銭類似性の高いものとしてポイントが明記されている。しかし、いずれも返礼品に関する自粛要請であって、ふるさと納税事業を紹介する事業者等が付与するポイントについてはなんら言及されていなかった。某大手ECサイトと都農町など一部の市区町村はこの隙を突いたのだ。
先月、某ふるさと納税事業を紹介する事業者が、別の大手ECサイトで利用可能なギフト券を1,000円分プレゼントするキャンペーンを行っていた。説明するまでもなく、ふるさと納税事業を紹介する事業者等が付与するポイント等についても自粛を要請する平成29年4月総務大臣通知の後である。「ふるさと納税事業を紹介する事業者等が付与するポイント」ではなく、「ふるさと納税事業を紹介する事業者が付与する他のECサイトで利用可能なギフト券」というのが、新たな抜け道なのだろうか1。ならば、次に出される総務大臣通達には「ふるさと納税事業を紹介する事業者が付与するもの(ポイント、ギフト券、商品券等)」といった文言が追加されるかもしれない。
市区町村やふるさと納税事業を紹介する事業者等の知恵には感服する。総務大臣通知で、ふるさと納税制度の趣旨に反する返礼品に関する新たな文言を追加しても、抜け道を完全に封鎖する事は不可能ではないか。そもそも、寄付金とは「経済的利益の無償の供与」である。それゆえ、返礼品の送付は寄附の対価としてではなく、別途の行為として行われているという建前である。大多数の寄附者が、寄附の申し込みと同時に、受領する返礼品等を選択している現状を踏まえると、その建前に無理はないか。ふるさと納税制度が始まってから来年で10年経過する。ふるさと納税制度を健全に発展させていくためにも、そろそろ「いたちごっこ」をやめて、制度全体を見直すべき時期が来ているのではないだろうか。
1 「総務大臣通知はお願いであって、拘束力がないから仕方ない」といった意見もあるだろう。
03-3512-1851
(2017年07月14日「研究員の眼」)
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