2017年07月11日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(7月号)~輸出は一段と上昇し、好調が鮮明に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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17年5月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て通関ベース)は前年同月比17.0%増と、前月の同10.4%増から上昇した(図表1)。輸出は海外経済の回復による半導体や一次産品の需要拡大、輸出単価の上昇を受けて増加傾向を続けている。先行きの輸出は新型スマホの発売を追い風に高水準を維持するだろうが、年末にかけて中国経済が再び減速に向かうなかで伸び率は徐々に低下していくものと予想する。

なお、ASEAN5カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、4月に東アジア・東南アジア向けと欧州向け、北米向けが揃って鈍化したものの、5月は3地域揃って勢いを取り戻しており、好調が鮮明となっている(図表2)。
(図表1)ASEAN6カ国の輸出額/(図表2)ASEAN5ヵ国仕向け地別の輸出動向
タイの17年5月の輸出額は前年同月比13.2%増と、前月の同8.5%増から再び上昇した。輸出の伸びは上下に大きな振れを伴いながら、16年初の資源価格の上昇と年後半からの電子製品やゴム製品、石油製品の海外需要の増加を受けて回復傾向が鮮明になっている。一方、輸入額は前年同月比18.2%増と、前月の同13.4%増から上昇した。結果、貿易収支は9.4億ドルの小幅の黒字となり、前月から8.9億ドル増加した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同12.8%増と、前月の同7.9%増から一段と上昇した(図表4)。工業製品の内訳を見ると、航空機・船舶・機関車(同294.2%増)と2カ月連続の三桁増を記録したほか、主力の自動車・部品(同8.1%増)や電子機器(同25.0%増)をはじめ、家電製品(同6.3%増)、機械・装置(同20.5%増)、石油化学製品(同16.2%増)も、それぞれ前月から上昇した。また農産品・加工品は同20.1%増(前月:同13.3%増)となり、加工食品(同12.0%増)やゴム(同45.1%増)、ゴム製品(46.0%増)を中心に好調に推移している。一方、鉱業・燃料は同30.2%増(前月:同36.0%増)と、石油製品を中心に二桁増が続いている。
(図表3)タイの貿易収支/(図表4)タイ輸出の伸び率(品目別)
マレーシアの17年5月の輸出額は前年同月比23.9%増と、前月の同6.6%増から上昇して二ヵ月ぶりの二桁増となった。輸出額は資源価格の上昇や海外需要の回復によって16年初から増加傾向が続けている。足元では輸出に伸び悩む動きが見られたものの、5月の急上昇で好調が続いていることが明らかになった。一方、輸入額も前年同月比22.0%増と、前月の同10.4%増から上昇した。結果、貿易収支は12.7億ドルの黒字と、前月から6.9億ドル黒字が縮小した(図表5)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同21.4%増と、主力の電気・電子製品(同22.8%増)が一段と増加して前月の同4.4%増から上昇した(図表6)。また動植物性油脂も同18.3%増と、パーム油(同16.9%増)が好調だったほか、前月に下振れたパーム核油(同33.2%増)が急伸して前月の同6.7%増から上昇した。また鉱物性燃料は同50.3%増(前月:同11.1%増)と、原油(同46.7%増)と石油製品(同64.3%増)を中心に上昇した。このほか、製造品(同9.3%増)や化学製品(同13.1%増)、食品(同7.7%増)など幅広い品目が前月から上昇した。
(図表5)マレーシア貿易収支/(図表6)マレーシア輸出の伸び率(品目別)
インドネシアの17年5月の輸出額は前年同月比24.1%増と、前月の同13.6%増から上昇した。輸出は一次産品の価格上昇によって16年初から緩やかに持ち直し、年後半には数量ベースでも増加に転じて一段と上昇、伸び率は7ヵ月連続の二桁増を記録している。一方、輸入額も前年同月比24.0%増と、前月の同10.5%増から上昇した。結果、貿易収支は4.7億ドルの黒字と、前月から8.6億ドル黒字が縮小した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、まず石油ガスが同32.3%増と、前月の同16.2%増から再び上昇して3カ月連続の二桁増となった(図表8)。非石油ガスについては、輸出全体の7割を占める製造品は同18.6%増(前月:同4.0%増)となり、前月に減少していた機械類(同43.2%増)と電気機器(13.9%増)がそれぞれ急上昇した。また農産品も同42.4%増と、前月の同32.9%増から上昇した。一方、鉱業品は同59.1%増と、鉱石・スラグ・灰(同51.3%増)を中心に大きく高水準を維持したものの、前月の同75.4%増から低下した。
(図表7)インドネシアの貿易収支/(図表8)インドネシア輸出の伸び率(品目別)
ベトナムの17年5月の輸出額は前年同月比25.0%増と、前月の同21.8%増から上昇し、4ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出の伸び率は16年前半まで伸び悩んでいたが、年後半から主力の電気・電子製品を中心に勢いを取り戻しており、足元でも政府目標(17年は+6~7%)を上回る伸びが続いている。一方、輸入額も前年同月比26.8%増(前月:同22.8%増)と一段と上昇した結果、貿易収支は前月から7.1億ドル減少して5.3億ドルの赤字となった(図表9)。

輸出を品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同39.8%増(前月:同43.0%増)と、2カ月連続で非常に高い伸び率を記録した(図表10)。これはサムスン電子の新型スマホの発売開始の影響であり、当面好調が続きそうだ。またコンピュータ・電子部品も同37.1%増(前月:同40.8%増)と好調が続き、12カ月連続の二桁増となった。アパレル関連では織物・衣類が同8.9%増(前月:同7.8%増)、履物が同11.0%増(前月:同14.2%増)と、それぞれ高水準を維持している。農産品ではコーヒー(同4.1%減)が落ち込んだものの、天候の改善を背景にコメ(同80.8%増)や野菜(同74.8%増)、ゴム(同43.8%増)など総じて好調である。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同28.0%増(前月:同27.2%増)と高い伸びを続いたほか、地場企業も同18.3%増(前月:同9.7%増)と大きく上昇した。
(図表9)ベトナム 貿易収支の推移/(図表10)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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