2017年07月03日

【5月米個人所得・消費支出】個人消費の伸びが前月から鈍化、貯蓄率は16年9月以来の水準に上昇

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は堅調な伸びを維持する一方、個人消費は前月から鈍化

6月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は5月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は、前月比+0.4%(前月改定値:+0.3%)となり、+0.4%から下方修正された前月を上回ったほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%も上回った。一方、個人消費支出(名目値)は、前月比+0.1%(前月:+0.4%)と、こちらは前月から伸びが鈍化、市場予想の+0.1%には一致した(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は、前月比+0.1%(前月:+0.2%)とこちらも前月から伸びが鈍化、市場予想の+0.1%に一致した(図表5)。貯蓄率1は5.5%(前月:5.1%)と3ヵ月ぶりに増加に転じ、16年9月(5.7%)以来の水準となった。

価格指数は、総合指数が前月比▲0.1%(前月:+0.2%)と、前月からマイナス転じ、市場予想の▲0.1%に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.1%(前月改定値:+0.1%)と、+0.2%から下方修正された前月値から横這い、市場予想の+0.1%に一致した(図表6)。なお、前年同月比では、総合指数が+1.4%(前月:+1.7%)、コア指数が+1.4%(前月:+1.5%)と、いずれも前月から伸びが鈍化した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:給与所得の伸び鈍化が消費に影響した可能性

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 名目個人消費支出(前月比)は、4月が+0.4%と堅調であったものの、5月には伸びが鈍化した。個人所得は、5月も堅調な伸びを維持したため、貯蓄率が大幅に上昇しており、5月の消費は所得対比でみても冴えない結果であったと言える(図表1)。

もっとも、5月の個人所得は、後述するように一部企業の株式配当により持ち上げられている部分があり、給与所得だけをみれば伸びは前月から大幅に鈍化しているため、これが消費に影響した可能性はある。

一方、消費者センチメントは、足元頭打ちがみられるものの、依然として高い水準を維持しているほか、労働需給のタイトな状況が持続していることから、賃金の伸びは再び加速することが見込まれる。このため、消費を取り巻く環境は依然として消費に追い風となっており、5月消費は鈍化したものの、今後も消費の増加基調は持続が見込まれる。

物価(前年同月比)は、総合指数、コア指数ともに3ヵ月連続で伸びが鈍化した。総合指数は、原油価格の下落により、エネルギー価格の押し上げが鈍っていることが影響している。一方、コア指数の低下は基調としての物価が落ちついていることを示しており、今後もコア指数に加速がみられない場合には、FRBによる政策金利引き上げペースに影響するため、注目される。

3.所得動向:賃金・給与の伸びが鈍化も、配当金の伸びが押し上げ

個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.1%(前月:+0.5%)と、前月から伸びが大幅に鈍化した。一方、利息・配当収入は+1.7%(前月:▲0.1%)と、前月から大幅に加速し、12年12月(+11.9%)以来の水準となった(図表2)。これは、一部企業の特別配当により株式配当が+4.8%(前月:+0.4%)となったことが大きい。このため、特別配当の一時的な要因を除けば個人所得はヘッドラインほど強いとは言えない。

個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、名目値が+0.5%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速したほか、価格変動の影響を除いた実質ベースも前月比+0.6%(前月:+0.2%)と、前月から伸びが加速した(図表3)。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:サービス消費は回復も、財消費が低迷

名目個人消費(前月比)は、財消費が▲0.5%(前月:+0.7%)と前月からマイナスに転じた一方、サービス消費は+0.3%(前月:+0.2%)と、こちらは前月から伸びが加速した(図表4)。

財消費では、耐久財が▲0.3%(前月:+1.0%)、非耐久財も▲0.5%(前月:+0.5%)と、いずれも前月からマイナスに転じた。耐久財では、自動車・自動車部品が▲0.6%(前月:▲0.1%)と年初から5ヵ月連続でマイナスとなったほか、非耐久財ではガソリン・エネルギー関連が▲4.8%(前月:+1.3%)と、前月からマイナスに転じた。

サービス消費は、医療が+0.2%(前月:+0.3%)と前月から伸びが鈍化した一方、住宅・公共料金が+0.9%(前月:+0.1%)と前月から大幅に伸びが加速した。これは公共料金が+4.1%(前月:▲1.4%)と大幅に増加したことが大きい。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格(前月比)が再びマイナスに転じた

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲3.0%(前月:+1.0%)と、再びマイナスに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は横這い(前月:+0.2%)と、前月から伸びが鈍化したものの5ヵ月連続のプラスを維持した。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+5.3%(前月:+10.2%)と、6ヵ月連続のプラスを維持したものの、前月から伸びが大幅に鈍化した(図表7)。食料品価格指数は、▲0.1%(前月:▲0.6%)。

と、こちらは13ヵ月連続でマイナスと、物価下落圧力が続いている。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2017年07月03日「経済・金融フラッシュ」)

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