- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 保険商品 >
- 大腸の内視鏡検査・治療の増加が民間医療保険に与える影響
大腸の内視鏡検査・治療の増加が民間医療保険に与える影響
保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
年齢群団別にみると、内視鏡治療は60~70代、腹腔鏡視下手術や開腹手術は70~80代に多かった。
開腹手術の1つである「結腸切除術」の手術率が低下している理由が、仮に身体に負担の少ない内視鏡治療や腹腔鏡視下手術の増加によるもので、早い段階で身体への負担が少なく、リスクを取り除けるようになっているのだとすれば望ましいことであるが、今回のデータだけでは検証ができない。
89歳以下で増加していたのは、主として「内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術」だった。
これらのことから、89歳以下では、内視鏡治療は身体への負担も軽くて済むため、大腸がんへ移行する可能性のあるポリープが見つかった場合は、早めに切除手術を受ける傾向がある一方で、90歳以上では、患者の負担を慎重に検討し、がん予防としての内視鏡ポリープ切除が89歳以下と比べて少ないことが推測できる。
3――民間の医療保険への影響
手技を診療行為名称別にみると、内視鏡による「内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術」「早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術」や腹腔鏡による「腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術」が増加しており、従前と比べて身体への負担が少ない手技が増えており、開腹手術である「結腸切除術」は減少していた。内視鏡による治療は、他の手技と比べて外来による治療が多く、入院したとしても在院日数は短い傾向があり、この5年間でさらに在院日数が短期化していた。
年齢の特徴をみると、90歳以上では大腸内視鏡検査の検査実施率は89歳以下と同様に増加傾向にあったが、89歳以下では手術率も増加していたのに対し、90歳以上では手術は増加していない等、90歳を境に傾向が異なっていた。
民間の医療保険では手術給付を行うことが多い。民間の医療保険商品では、概ね、身体に負担が大きい手術ほど、あるいは入院をともなう手術で給付額が高く設定されていることが多い。
今回の結果から、医療保険の支払事由としてポリープ等切除のための手術が増加していると推測できる。ただし、身体に負担が少ない内視鏡による治療が増加しており、外来や短期間の入院による手術が増加しているとすれば、従前に比べて給付額が低い手術が増加しているものと推測できる。
大腸内視鏡検査を受ける患者が引き続き増加傾向にあることから、今後もポリープ等切除手術は増加するものと推測できる。ただし、身体の負担が少ない手技や、外来、または短期の入院による手術が増える可能性がある。2012年度以降増加している「早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術」の実施医療機関が増えれば、より内視鏡による手術が増加する可能性がある。
今回のデータでは、90歳以上の手術率は5年間で大きく変わらなかったが、今後、元気な高齢者が増加すれば、89歳以下と同様に90歳以上の手術も増加する可能性がある。
03-3512-1783
(2017年06月28日「基礎研レポート」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年03月28日
“ガソリン補助金”について改めて考える~メリデメは?トリガー条項との差は? -
2024年03月28日
健康無関心層へのアプローチ -
2024年03月28日
中国経済:景気指標の総点検(2024年春季号) -
2024年03月28日
高齢者就業への期待と課題(中国) -
2024年03月28日
中国における結婚前の財産分与から見た価値観の変化
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
【大腸の内視鏡検査・治療の増加が民間医療保険に与える影響】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
大腸の内視鏡検査・治療の増加が民間医療保険に与える影響のレポート Topへ