2017年06月20日

日銀短観(6月調査)予測~大企業製造業の業況判断D.I.は3ポイント上昇の15と予想

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. 6月調査短観では、大企業製造業で3四半期連続の景況感改善が示されると予想する。大企業非製造業の景況感も2四半期連続で改善すると見ている。前回3月調査以降の景気は、世界経済の回復やITサイクルの好転を受けた良好な輸出環境と、雇用所得環境の改善を受けた消費の持ち直しに支えられて堅調に推移している。大企業製造業では良好な輸出環境や為替の安定、消費の持ち直しを受けた生産回復により、景況感の改善が見込まれる。非製造業も消費の持ち直しを受けて景況感が改善するだろう。一方、人手不足が深刻化しているほか、資源価格を中心に輸入物価が高止まりしており、景況感の改善を抑制しそうだ。
     
  2. 先行きの景況感については、引き続き海外情勢の不透明感が根強いことから、慎重な見方が示されると予想。トランプ政権の先行き不透明感に加え、英国のEU離脱や北朝鮮情勢など地政学リスクへの警戒も景況感の重石になる。国内に関しても、物価の上昇が予想されることから、消費減速への懸念が台頭しそうだ
     
  3. 2016年度の設備投資実績(全規模全産業)は、前年度比0.7%減と前年を割り込みそうだ。一方、2017年度計画は、2016年度実績比で4.2%増と前回から上方修正されると予想。発射台となる前回調査の伸び率が例年よりも高いだけに、近年を上回る高い伸び率となるだろう。ただし、実勢としては力強さを欠くとの評価になる。海外をめぐる先行き不透明感が高い状況が続いており、現段階で投資を大きく積極化する動きは限られるとみている。
     
  4. 今回の見どころは、「販売価格判断」の先行きだ。近年、人手不足感が強まり続けており、運輸業などでは、人件費上昇を価格に転嫁しようとする動きがみられる。こうした動きが一部業種に留まるのか?それとも、幅広い業種に広がる兆しを見せるのかが注目される。
(図表1)日銀短観業況判断D.I.の予測表
■目次

6月短観予測:景況感は小幅ながら幅広く改善、先行きは慎重さが残る
  ・製造業・非製造業ともに改善を予想
  ・注目ポイント:2017年度の設備投資計画
  ・日銀金融政策との関係:影響は限定的
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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