2017年06月09日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(6月号)~輸出は増勢鈍化も好調継続

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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17年4月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て通関ベース)は前年同月比9.9%増と、前月の同14.8%増から低下した(図表1)。輸出は16年からの国際商品価格の上昇や海外経済の回復による一次産品や電気・電子製品などの需要拡大を受けて増加傾向を続けているが、これまで輸出を押上げていた価格上昇の要因が剥落するなかで増勢が鈍化しつつある。先行きの輸出は当面高めの伸びを維持するだろうが、中国経済が再び減速に向かうなかで緩やかな伸びに落ち着いていくものと予想する。

なお、ASEAN5カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、4月は東アジア・東南アジア向けと欧州向け、米国向けが揃って伸び率が前月から低下したものの、概ね増加傾向は続いている(図表2)。
(図表1)ASEAN6カ国の輸出額/(図表2)ASEAN5ヵ国仕向け地別の輸出動向
タイの17年4月の輸出額は前年同月比8.5%増と、前月の同9.2%増から低下した。輸出の伸びは上下に大きな振れを伴いながら、16年の資源価格の上昇と電子製品やゴム製品、石油製品の海外需要の増加を受けて回復傾向が鮮明になっている。一方、輸入額は前年同月比13.4%増と、前月の同19.3%増から低下した。結果、貿易収支は0.6億ドルの小幅の黒字となり、前月から15.5億ドル黒字が縮小した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同7.9%増と、前月の同8.7%増から低下した(図表4)。工業製品の内訳を見ると、航空機・船舶・機関車(同242.0%増)と急伸したものの、主力の自動車・部品(同1.1%減)や電子機器(同2.7%増)をはじめ、家電製品(同1.5%減)、機械・装置(同3.6%増)、石油化学製品(同2.2%増)がそれぞれ鈍化した。また農産品・加工品は同6.8%増(前月:同7.3%増)となり、飲料(同7.8%減)やタピオカ(同19.3%減)の落ち込みが響いて低下したものの、コメ(同22.7%増)やゴム(同41.1%増)とゴム製品(46.0%増)を中心に堅調な伸びを維持している。さらに、鉱業・燃料は同36.0%増(前月:同44.9%増)と、依然として石油製品を中心に二桁増の高い伸びが続いている。
(図表3)タイの貿易収支/(図表4)タイ輸出の伸び率(品目別)
マレーシアの17年4月の輸出額は前年同月比6.7%増と、前月の同13.7%増から低下した。輸出額は資源価格の上昇や海外需要の回復によって16年初から増加傾向を続けているものの、伸び率はベース効果の剥落によって伸び悩んできている。一方、輸入額も前年同月比10.4%増と、前月の同27.7%増から低下した。結果、貿易収支は19.9億ドルの黒字と、前月から7.7億ドル黒字が拡大した(図表5)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同4.6%増と、主力の電気・電子製品(同8.2%増)が好調だったものの、船舶(24.6%減)が落ち込んで前月の同9.2%増から低下した(図表6)。また動植物性油脂も同6.7%増と、パーム油(同11.6%増)が好調だったものの、パーム核油(同20.8%減)が落ち込んで前月の同12.0%増から低下した。また鉱物性燃料は同6.7%増(前月:同12.0%増)と、石油製品を中心に低下した。一方、製造品は同9.3%増(前月:同2.1%増)と上昇した。
(図表5)マレーシア貿易収支/(図表6)マレーシア輸出の伸び率(品目別)
インドネシアの17年4月の輸出額は前年同月比12.6%増と、前月の同24.3%増から低下した。輸出は一次産品の価格上昇によって16年初から緩やかに持ち直し、年後半には数量ベースでも増加に転じて一段と上昇、伸び率は6ヵ月連続の二桁増を記録している。一方、輸入額も前年同月比10.3%増と、前月の同17.5%増から低下した。結果、貿易収支は12.4億ドルの黒字と、前月から1.6億ドル黒字が縮小した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、まず石油ガスが同9.5%増と、前月の同21.9%増から低下したものの、高めの伸びとなった(図表8)。非石油ガスについては、輸出全体の7割を占める製造品は同4.0%増(前月:同21.9%増)となり、電気機器(4.7%減)が落ち込んで低下した。一方、鉱業品は同75.4%増(前月:同39.9%増)となり、鉱石・スラグ、灰を中心に大きく上昇した。また農産品も同32.9%増と、前月の同27.9%増から上昇した。
(図表7)インドネシアの貿易収支/(図表8)インドネシア輸出の伸び率(品目別)
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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