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- ブラジル経済の見通し-緩やかな回復基調も政治リスク再燃懸念あり
1-3月期の純輸出の寄与度は前期比0.4%増とプラスに転じた。前期比の伸び率で輸出が輸入を上回り、その結果寄与度は上昇した。今後は鉄鉱石価格の下落に伴い輸出が伸び悩み、内需の回復に伴い、輸入が伸びることから純輸出の寄与度は減少するだろう。
通関ベースで見ると、足元の輸出は一次産品を中心に前年比で大きく増加している(図表10)。もっとも輸出数量は大豆などの一部品目を除き、前年同期比でほぼ横ばいであり、主に鉄鉱石価格の上昇が輸出の増加につながっている。一方、輸入も前年比で増加しているが、15年と16年が二年連続の対前年比二桁減となったため、その反動で輸入が増加したものと見られる。貿易収支は大幅な黒字となっており、1-5月累計は1989年の統計開始以来最大の水準に達している(図表11)。
3――物価・金融政策等の動向
為替は財政収支の悪化やペトロブラスを巡る汚職発覚等の内部要因と米国の利上げ観測や資源価格下落といった外部要因によって、大きくレアル安が進行した。16年以降はテメル新政権への期待や、米国の利上げ観測の後退と資源価格の上昇によってレアル高が進行してきた。17年5月にはテメル大統領の汚職隠蔽疑惑浮上でレアル安が進行したが、その後落ち着きを取り戻している。今後は国内政治の行方と米国の追加的な金融引締め策8によってレアル安が進行する懸念もあるが、ブラジルは世界でも有数の外貨準備残高を有しており、中央銀行が為替介入によってレアル相場を下支えするであろう(図表13)。
8 当研究所では、17年は6月、9月の追加利上げ(年内3回ペース)を予想している。
インフレ率は、15年にレアル安による輸入物価の上昇や天候不良による飲食料品の価格高騰、公共料金の値上げ等によって大きく上昇した。しかし16年以降は、これらの要因が徐々に解消されたため、インフレ率は大きく低下し、4月のIPCA(拡大消費者物価指数)は前年比4.08%増と、インフレ目標の中心値4.5%を下回っている。インフレ率は引き続き4%程度で推移すると予想する。
金融政策は、昨年10月以降、金融緩和が続いている。中央銀行はインフレ率の低下を背景に、5月にかけてSelicを6回にわたって計4%(14.25%→10.25%)引き下げている。4月のCopom(通貨政策委員会)では、インフレ率の低下と国内景気の緩やかな回復基調のもと、更なる利下げを示唆した一方、年金改革法改正等の財政再建に向けた構造改革の行方が焦点になるとしていた。しかし、5月のCopomでは、大統領の汚職疑惑浮上によって構造改革の先行きに懸念が生じた影響で利下げペースを落とすことを示唆した。引き続き、政治不安による影響が懸念されるものの、足元のインフレ率が継続すれば、Selicは17年末にかけて8.5%まで引き下げられると予想する。
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(2017年06月06日「基礎研レター」)
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