2017年06月02日

「予期せぬ原油高でドル高」というシナリオも~金融市場の動き(6月号)

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. (トピック) 本日、日経平均株価は2万円の節目を突破したが、ドル円レートは未だ111円台で低迷している。その背景にあるのが米長期金利の低迷であり、トランプ政権への過度の期待が剥落したことや地政学リスク等を背景に安全資産としての国債需要が高まったことなどが影響している。そして、原油価格の下落もその一因と考えられる。今年に入って原油価格が下落したことで期待インフレ率が低下し、米長期金利の押し下げを通じてドル安要因になっている。直近の原油価格は、5月下旬に決まったOPEC等の減産延長の効果に対して懐疑的な見方が台頭したことで弱含んでいるが、一方で今後は予期せぬ原油高にも注意が必要になる。減産が継続されるなか、今後は世界的な原油需要期に入っていくため、需給が引き締まりやすい。仮に大規模な生産停止が発生すると、供給不足感が極度に強まり、原油価格が反発する恐れがある。とりわけ、ナイジェリアとリビアは政情が不安定で、今後も武力勢力による攻撃で大規模な生産停止が起こる可能性がある。イランは、2016年1月に制裁が解除された後に急ピッチで増産を進めてきたが、トランプ大統領はイランへの圧力を強化しており、今後合意破棄に至る可能性がある。米国が制裁を復活した場合には、イランの原油生産量が大きく減少する可能性が高い。昨年11月のOPEC総会で予想を超える減産が合意に至った時には、原油価格が5ドルほど上昇し、米長期金利が大きく上昇したことで、ドル円レートは2円ほど上昇した。原油価格の大幅上昇はドル円に無視できない上昇圧力を発生させる可能性があるだけに、政情不安国の動向やイランを巡るトランプ政権の出方は注視する必要がある。
     
  2. (金融市場) 今後は米経済指標の持ち直し、6月FOMCでの利上げと前向きな金融引き締め姿勢維持などからドルが持ち直すと予想。長期金利も若干水準を切り上げるだろう。
米期待インフレ率と原油価格
■目次

1.トピック:「予期せぬ原油高でドル高」というシナリオも
  ・米長期金利の低迷がドルの重石に
  ・予期せぬ原油高でドル高も
2.日銀金融政策(5月):出口戦略の公表を検討へ
  ・(日銀)現状維持(開催なし)
3.金融市場(5月)の動きと当面の予想
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

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